近年、Jリーグでプレーするスペイン人選手が増えている。また、乾貴士や久保建英と、かつてはハードルが高かったスペインの1部リーグでプレーする日本人選手も増えている。では、近づいてきた両国では何が変わり、またどんな差が横たわっているのか。ヨーロッパ最高位の指導ライセンスであるUEFAプロを持つチーム・個人のパフォーマンス分析の専門家であり、元スペイン代表ダビド・ビジャらが生み出したメソッドを日本で伝えているアレックス・ラレア氏に話を聞いた。
■戦術より先に選手を育てるのがスペイン流
「スペインサッカー」なるものは存在しない。だが、スペインを世界の頂点に立たせた確固たる理由はある。
表面的なチーム戦術云々の前に、まずはベースである選手の育成に力を入れる。スペインでは、そうした傾向が強まっているという。
「クラブが志すゲームモデルに沿ってアカデミーからトレーニングをするというのは、実のところスペインでも割と最近始まったことだと思います。昔は、在籍している監督に従ってトップチームがプレーして、それをアカデミーで真似してみようというレベルでした」
ラレア氏が語る「かつてのスペイン」の姿は、現在の日本の姿に似ている。では、スペインで起きた変化は、日本にも導入できるものなのか。
実兄が育成部長を務め、ラレア氏自身も姉妹クラブで指導にあたっていたレアル・ソシエダは、成功例の一つだ。
「レアル・ソシエダは、まさにゲームモデルをベースとしたトレーニングによる育成が非常にうまくいった代表的なクラブだと思います。以前から下部組織はあり、エリート選手が来るクラブではありました。しかし、具体的にどういうトレーニングをして、どういう選手を目指させるか、あるいは各ポジションですべきプレーや要求されるものまで考えたトレーニングになってきたのは、おそらくここ10年くらいでのことだと思います。
現在、トップチームには15人のカンテラ上がりの選手がいますが、これはたまたまではなく、クラブが持っていた未来へのプランの成功例です」