■ロングスローに感じるストレス

 このように、年末から年始にかけての年代別の試合ではスローインからの得点というシーンを何度も見た。だが、ロングスローで得点が決まって勝敗を左右したことについて、僕は大きな違和感を抱かざるを得なかった。

 もちろん、たとえば青森山田がロングボールを武器として使ったことを非難しようというつもりはない。

 ロングスローというのは現在のサッカー・ルールによって許された技術であり、スローイングの技術を磨いて得点源として利用したことを非難する筋合いはまったくない。ただ、こういう傾向がさらに拡大していったとしたら、将来のサッカーはどんなことになってしまうのかが心配なのである。

 サッカーというのは、足を使ってボールを相手陣内深くまで運んで、最後はシュートという難しい技術を使って相手ゴールに入れることを目的としたゲームだ。そのプロセスで様々な技術や戦術、駆け引きが駆使されて両チームの攻防が繰り返され、観客はそれを見ることに楽しみを見出すわけだ。

 だが、ロングスローという手段を使えば、そうしたプロセスを一切抜きにして一気に相手ゴール前までボールを運ぶことができるのだ。CKやFKでも同じことが言えるが、CKやFKでは「キック」というサッカー独特の技術が使われる。それに対して、スローインというのは手でボールを投げるという、サッカーの技術とは言えないような技術でボールを運ぶことになるのだ。

 しかも、スローインは回数が多い。

 山梨学院と青森山田の決勝戦では110分の試合を通じてCKの数は山梨学院はわずかに1回、攻める時間帯が長かった青森山田は7回だった。それに対して、アタッキングサードでの(つまり、ロングスローが相手のペナルティーエリアに届く位置での)スローインは山梨学院には9回、青森山田には12回もあったのだ(そのうち、ロングスローでなく短くつないだのは青森山田の2回だけ。他の19回はいずれもロングスローが使われた)。

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