■バランスの取れた選手を続々と輩出
サガン鳥栖のチームは、そうした切り替えが実にスムースにできているように思えるのだ。
逆の言い方をすれば、「サガン鳥栖のスタイルとは何か」ということはなかなか見えてこない。
サガン鳥栖のU-18に中野伸哉という選手がいる。
2003年8月生まれのまだ17歳だが、3年前にU-15で全国制覇した時も、2020年12月にU-18で優勝した時もフル出場していたDF(左サイドバック)で、各年代の日本代表にも選ばれ続け、2019年のU-17ワールドカップでは全4試合で先発。昨年の12月下旬に行われたU-19日本体表候補合宿にも招集されており、本来なら2021年にインドネシアで開催される予定だったU-20ワールドカップにも出場が期待されていた。
つまり、サガン鳥栖のこの世代を代表する選手であり、2種登録選手として2020年8月には16歳のうちにJ1リーグ・デビューも果たしている。
その中野のプレースタイルを見てみると、たとえば非常な俊足であるとか、高さがあるといったはっきりした特徴がつかみにくい選手ということができる。実に卒なく、コンスタントに力を出せる選手であり、攻撃的、守備的という点でもまさにバランスの取れた選手というしかない。
同じくU-18チームのエース格で、来シーズンのトップ昇格を決めている相良竜之介はテクニシャン・タイプで特徴のはっきりした選手だが、全体としてはサガン鳥栖には中野と同じような総合的なスタイルの選手が多い。
現在19歳でサガン鳥栖のトップチームでも中心となって活躍しており、今年のU-20日本代表の中心として活躍するであろう松岡大起も、バランサーとしての能力に優れた選手だ。
選手としても、チームとしても、明確な独自のスタイルを貫き通すことよりも、バランスを取りながら戦って、様々な状況にうまく対応できる。それが、サガン鳥栖のアンダー世代の共通した特徴ということができるだろう。
それが、いろいろなタイプの相手と戦って勝ち上がっていかなければならない、そして試合展開によって戦い方を変えていかなければならないノックアウト式トーナメントでサガン鳥栖の若いチームがコンスタントに勝ち上がっていける原因の一つなのではないのだろうか。