本来であれば、この試合ではトナーリがハカン・チャルハノールと共にミランの心臓になるはずだった。
トナーリは、アンドレア・ピルロとジェンナーロ・ガットゥーゾを合わせたような選手だ。相手に寄せてボールを奪い、的確にパスを散らしてビルドアップし、ミドルレンジのパスで一気に攻撃を動かす。しかし、1人で2人分の良さがあっても、1人で2つのポジションを兼ねることは出来ない。ピルロとガットゥーゾがコンビでそれぞれの良さを発揮したように、トナーリの良さを発揮するためにも相棒の存在は不可欠だ。ケシエがいれば、試合を組み立てるにしても相手に寄せるにしても後ろを安心して任せられるが、1つ前のポジションで良さを発揮するクルニッチではその役割は務まらなかった。
それでも、ステファーノ・ピオリ監督はトナーリとクルニッチのコンビをいじることなく様子を見続けた。ハーフタイムで選手の交代があるかと思われたが、そのまま後半がスタート。修正が施された様子もなく、試合内容もそのままラツィオに自由に動かれるものになった。59分にはセルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチをアタッキングサードでフリーにしただけでなく、浮き球で裏をとられてチーロ・インモービレに決められ2ー2。前に出ることも後ろに下がることも、どちらも中途半端になってしまった。
負傷者が多発しても首位を守ってきたミランだったが、ケシエだけは代えの利かない存在だということが浮き彫りになった。普段の試合の中でもその存在感は大きいが、不在だとよりはっきりと重要性がわかる。中盤の守備の要がいなくなると、守備だけではなく攻撃にも問題が生じてしまう。