■J1で戦えるチーム作りを意識しながら…
通常のシーズンならば、3位はプレーオフ圏内だ。V・ファーレン長崎はリーグ戦で12位に沈んだ昨シーズンも、ルヴァンカップで史上初のグループステージ突破を果たし、天皇杯でも過去最高のベスト4まで勝ち上がった。手倉森誠監督のもとで戦ったこの2シーズンの結果は、決して悪くない。
J1昇格をノルマとしながらも、J2を勝ち抜くことだけに精力を注いできたわけでもない。年齢層とポジションのバランスを考えてチームを編成し、日本人の若手から中堅を確実に成長させていった。
柏レイソルや湘南ベルマーレでプレーしてきた秋野央樹は、キャプテンとして、ボランチとして、チームの大黒柱となった。FWから右サイドバックへコンバートされた毎熊晟矢、2列目の左サイドを中心に起用された氣田亮真はともに大卒1年目で、手倉森監督の積極的な起用で歩幅広く成長した。高卒でプロ4年目の名倉巧も、ドリブラーとして覚醒した。彼ら4人を含めて、J1のクラブが興味を示す選手は少なくないはずだ。
この2シーズンのチームの足跡を振り返れば、客観的に見て続投の選択肢もあっただろう。コロナ禍で様々な障害に見舞われた今シーズンは、12月18日時点でJ2の11チームが監督の続投を発表している。そのなかには、長崎と同じようにJ1昇格を目標に掲げていたクラブ、昨シーズンより順位を下げたクラブもある。
手倉森監督が責任を取る意思を固めていたとしても、残り2試合まで昇格争いを繰り広げてきたのだ。慰留されてもおかしくない状況で解任となったところに、フロントと指揮官が一体になり切れなかったところが透けて見える。