■コロナ禍で4試合を完遂できた意味
反町技術委員長は「綱渡り」と語ったが、2カ月、4試合の活動を何の問題もなく(メキシコ戦の霧を除いて)完遂することができたのは、「奇跡」と言ってよい。選手たちは無事所属クラブに戻り、帰国してから2週間の「待機期間」を経たスタッフ、反町技術委員長を含めた役員も、無事12月4日に期間が満了し、普段の生活にもどった。そして「奇跡」は偶然生まれたわけではなく、JFAという組織を挙げての(「総力戦」と、田嶋会長は表現した)準備と実施によるものだった。それはすべて、日本代表を一歩でも前進させるための努力だった。
「歴史」は振り返ることはできる。しかし「いま」が未来から見て歴史的にどんな意味があるのか、想像することは簡単ではない。しかし2年後、カタールで行われるワールドカップのスタジアムに立ったとき、日本代表の躍進を見て、「2020年秋の活動がこの活躍につながったんだな」と思うのではないかと、私(大住)は感じている。
コンビネーションがうまくいった、シュートが決まった、強い守備ができたというようなことだけではない。むしろ、それ以外のもの、サッカーというチームゲームで最も重要な一体感やチームへの献身ということで日本代表が「チーム」になるために、ことしのコロナ禍による相次ぐ代表活動の中止と、その果てに、たくさんの人の献身で実現された4つの試合が大きな意味をもつと思うのだ。
最後に、反町技術委員長は力強く語った。
「この2カ月の活動、4試合は、JFAとしては財政的にも苦しいものでしたが、われわれはサッカーの最先端として力を込めてやっていかなければならないと思っています。そして選手を含めすべての人が目標に向かって力を尽くしてくれたおかげで、必ず来年につながる活動ができたと思います。最終的な目標であるカタールで大躍進を振り返ったときに『これが大きかったな』と思えるようにしていきたいし、これからもできることはどんどんやっていくつもりです」