■アカデミーからトップ昇格へのふたつの道

 若手多数を含む先発メンバーは昨シーズンまでJ3で戦っていた「FC東京U-23」のメンバー表のように見えた。

 育成に力を入れているFC東京は、2016年からU-23チームがJ3に参戦していた。トップに昇格したものの出場機会が少なくなってしまった若手やU-18世代の有力選手に経験を積ませるための試みだ。J3での対戦相手は「J2昇格」を目指すクラブであり、選手個々も上のカテゴリーに上がることを狙っているハングリーな選手たちであり、名門FC東京の有望な若手、つまりエリートに対して強い対抗心を持って厳しくチェックしてくる。若い選手たちにとってはたいへんに良い経験になるだろう。

 ところが、今年はFC東京のU-23はJ3リーグ参戦を辞退してしまった。新型コロナウイルスの感染拡大によって長い中断があり、再開後は各カテゴリーの試合が過密日程になっており、スタジアムが確保できないというのが理由だった(ガンバ大阪セレッソ大阪のU-23はJ3に参戦している)。

 だが、J1リーグが過密日程で、しかもその対策として選手交代が5人まで認められることになったおかげで、FC東京のU-23の選手たちもJ1リーグでの出場機会が例年以上に多く与えられている。

 柏戦で先発した23歳以下の選手たちのうち、J1リーグでのこれまでの出場回数が1ケタだったのはGKの波多野豪とMFの品田愛斗の2人だけだった。つまり、今シーズンは若手にも十分な出場機会が与えられているのだ。それどころか、23歳以下でも中村拓海や小川、安部などはすでにレギュラー格である。

 今シーズンのFC東京を見ると、U-18を「卒業」した選手のうちかなり多くがトップ昇格を果たしていることが分かるが、同時にFC東京の場合、「大学経由」というルートも確立されている。

 今シーズンは、川崎フロンターレ三笘薫旗手怜央に象徴されるように大学卒新人の“当たり年”だが、FC東京でも安部はすでにレギュラー格だし、中村帆高紺野和也も出場機会を得ている。そして、安部はFC東京の下部組織で育った「HG」でもある。FC東京では、過去にもU-15、U-18時代にFC東京の下部組織で育った武藤嘉紀が慶應義塾大学ソッカー部に入部し、大学卒業を待たずにFC東京とプロ契約を結んで一気にスターダムにのし上がったといったこともあった。

 FC東京では、直接トップに昇格する場合、そして大学経由でプロとなる場合も含めて、下部組織からトップへの道が確立されているようだ。

※第3回に続く

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