11月7日にYBCルヴァンカップの決勝戦がある。カードは柏レイソル対FC東京。その10日前に行われ、まさに前哨戦となったJ1リーグでの同カードの戦いの勝者は柏レイソルだった。この試合、FC東京は大胆なターンオーバーを行なった。そこには、他のクラブではなかなか実現できないであろう、ある戦略が秘められていたのだ。
■ホームグロウン選手が8人も出場
ターンオーバーを使ったこの日のFC東京の布陣は、11人の先発メンバーのうち実に7人が23歳以下だった。「23歳超」はDFの森重(33歳)とボランチの高萩洋次郎(34歳)の両ベテラン。そして、アダイウトン(29歳)、レアンドロ(27歳)の両ブラジル人FWだけだった。
そして、もう1点注目すべきは、メンバー表を見るとこの先発した23歳以下の選手7人のうちなんと6人に「HG」という記号が付いていたことだ。
「HG」とは「ホームグロウン選手」のことだ。
Jリーグの定義によると「ホームグロウン選手」とは「12歳の誕生日を迎える年度から21歳の誕生日を迎える年度までの期間において、特定のJクラブの第1種、第2種、第3種又は第4種チームに登録された期間の合計日数が990日(Jリーグの3シーズンに相当する期間)以上である選手」と定義されている。
要するに、FC東京ならFC東京の下部組織に3シーズン以上在籍し、そこで育った選手ということになる。
「HG」であることと年齢は関係ない。
この日のFC東京の控えに入っていた三田啓貴(30歳)も「HG」だ。三田は、第3種(U-15)、第2種(U-18)時代はFC東京の下部組織におり、その後、明治大学経由でFC東京に戻ってきた選手だ。
柏も育成組織が機能しており、「HG」が多いが、たとえばFC東京戦にもフル出場していたクラブのレジェンドの1人、大谷秀和は35歳だが「HG」だ。大谷の前所属チームは「柏レイソルユース」となっている。
J1リーグの場合、「HG」2名以上の登録が義務付けられている。しかし、大谷や三田のようなベテランを含めても、クラブによっては「HG」の登録義務を果たすのに苦労しているところも多いのが現状だ。
そんな中で、柏戦のFC東京では23歳以下の「HG」、つまり下部組織から昇格した直後の(あるいは、大学経由で戻ってきたばかりの)「HG」組が6人も先発したのである。これは驚異的なことと言わざるをえない。
ちなみに、柏戦ではベンチ・スタートで58分に交代出場した安部柊斗も22歳(12月に23歳の誕生日を迎える)の「HG」である。
すなわち、この日のFC東京では「HG」が8人出場し(そのうち6人が先発)、三田を除いて8人中7人が23歳以下というメンバー構成だったのである。さらに、今シーズンのFC東京には、この日の柏戦に登場した選手以外にも「HG」としてDFの岡崎慎とバングーナガンデ佳史扶、そしてMFの平川怜がトップチームに登録されている。いずれも23歳以下の若い選手だ。
FC東京は数あるJリーグクラブの中でも育成部門が最も成功を収めているクラブの一つだが、それがトップチームに直結している点でもJリーグ随一と言っていいだろう。