■世界的パンデミックのすぐ後に
そう、今年度で天皇杯は「第100回」を迎える。つまり、天皇杯は今からちょうど100年前の1921年に始まったのである。
第1回大会が行われたのは1921年の11月のことだった。「天皇杯」が下賜されたのは第2次世界大戦後のことだから100年前はもちろん「天皇杯」ではなく、「ア式蹴球全国優勝競技会」というのが正式名称で、その後も大会の形式や名称は幾度も変わってきたが、とにかくア式蹴球(=サッカー)の全国選手権は今年で第100回を迎えたのだ(この大会の場合、天皇の崩御や戦争などによって中止になった大会も「回数」に含めているから、実際に大会が開催されたのは今年度で91回目ということになる)。
今から100年前の日本とは、いったいどんな時代で、そこで何が起こったのであろうか?
1921年(大正10年)……。それは、第1次世界大戦(1914~18年)が終結した直後のことだった。ロシアでは1917年にボリシェビキ革命が起こってソビエト政権が樹立されたばかり。日本は大戦中は好景気に沸いたものの、戦争が終ると不景気に見舞われ、またインフルエンザ(いわゆる「スペイン風邪」)が世界的なパンデミックを起こし、世界では数千万人が死亡。日本でも約39万人が犠牲となった(当時の日本の人口が現在の半分くらいだったことを考えれば、いかに被害が大きかったかが分かる)。
第1次世界大戦では機関銃や戦車、航空機、毒ガスなど数々の新兵器が登場したおかげで、歴史上最大、約1000万人もの戦死者を出したのだが、スペイン風邪による死者数はそれを上回った。
さらに、日本が関東大震災に見舞われるのは、2年後の1923年9月のことだ。