柏レイソルに漂う「アルゼンチン」の香り キャリア35年の名将と「チーム潜在力」の画像
柏レイソルの古賀太陽 写真:YUTAKA/アフロスポーツ

■成熟するパスワークに漂う南米の香り

 間もなく折り返し地点を迎えるJ1リーグは、川崎フロンターレが大きく抜け出す縦長の展開。首位を追う第2グループも徐々に絞られてきた。

 後半戦にかけて伸びてきそうなチームに、柏レイソルが挙げられる。

 再開直後に3連敗。オルンガと並ぶ前線のキーマン、クリスティアーノが長期欠場を余儀なくされ、センターバックに故障者が続出するなど数々の困難に見舞われているが、試合を重ねるたびに着実に力をつけている。

 3-0でガンバ大阪を退けた直近水曜日の一戦は、このチームの成長を強く印象づけた。

 このところ安定した試合運びができているのは、パスワークの精度が高まってきたことが大きい。

 柏というとオルンガばかりが注目されるが、最終ラインから中盤、中盤から前線にかけてのボール運びが非常にいい。ミスが減り、流れがスムーズになっただけでなく、最近は巧みに敵を外す創造性も出てきた。

 3ゴールが生まれたG大阪戦は、もう2点くらい決まってもいい内容。

 例えば83分には、人数がそろった敵陣を戸嶋、オルンガ、江坂の3人で完全に切り崩し、戸嶋がGK東口との1対1を迎えた。

 詳しく説明すると、中盤の戸嶋から相手センターバックを背負ったオルンガにくさびが入り、オルンガが落ち着いて江坂へ。このときオルンガの横からゴール前に駆け上がった戸嶋に、江坂から絶妙なスルーパスが通った。

 いわゆる3人目の動きである。

 この一連の流れでポイントになったのは、オルンガのポストプレー。背中に張りついた相手センターバックを完全に捕まえたことで、G大阪守備陣は戸嶋の動きに対応できなかった。

 こうしたプレーは、しばしば南米、とりわけ中央突破にこだわるアルゼンチンでよく見られる。

 例えば3対2の局面で、ひとりが相手ひとりを捕まえる。具体的にいえば、相手に背中をあずけてブロックするのだ。これで3対2は2対1となり、“詰み”に大きく近づく。

 以前、FC東京のルーカスがこうしたプレーでゴールを演出したのを見たことがあるが、こうした数学的発想による崩しは、残念ながらJリーグではあまり見られない。

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