■下位リーグにも恩恵を

 こうしたアップセットが起きたのは、格上であるJ1チームがメンバーを落としたことも理由の一つだろう。かつてはリーグ戦からの大幅な選手の入れ替えが試合の魅力を落とすものとみなされ、「ベストメンバー規定」と呼ばれる縛りが存在したこともあった。

 J1優勝クラブに長く携わり、J3の現場まで知る関係者は、サテライトリーグがなくなった現在、若手などチーム全体に試合経験を積ませるために「年間50試合くらいは必要」と話す。リーグカップも若手らを起用する場の一つとなるが、かつてのように下位リーグのクラブも参加したならば、そちらにとっても名を売る格好の舞台となる。

 この関係者は、入場料収入を得るためにも、リーグカップは貴重な場になると話す。その価値は、下位リーグのチームになるほど大きな恩恵として感じられることになる。昨年の1試合あたりの平均入場者数をみれば、J3は2396人、J2は7176人、J1は2万751人。かつてJ2が参加したシーズンに照らし合わせ、初戦でJ3とJ2が対戦し、その後はJ1が登場するような方式とするならば、上位リーグのクラブが待つ試合への勝ち上がりはリーグのカテゴリーを上がるのと同様、より多くの観客を呼ぶ可能性を秘める。1999年のJ2から旋風を起こしたFC東京も、初戦の1908人から、4130人、5208人と、勝ち上がるごとにホームゲームの観客数を増やしていった。

 入場料収入については、イングランドのリーグカップの方式が興味深い。ホームチームが全額を得るのではなく、対戦した両クラブで45%ずつを分け合うのだ。

 この方式を取り入れたならば、J1クラブにとってはこれまでよりも実入りは少なくなる可能性が高い。だが、「DAZN」による多額の放映権料により、J1内でのリーグ戦の順位による賞金額と同様、下位リーグとの格差は拡大している。リーグ戦で「トップ」を引き上げる施策をしているわけだが、置き去りにされている下位リーグに対しての、J1との対戦による注目度のアップやチケット収入のシェアなどによる「ベースアップ」も大きな意味を持つはずだ。せっかく56クラブまで拡大したというのに、リーグ全体を活用しないのではもったいない。

 試合放映やスケジュール設定など、難しい問題はあるのかもしれない。だが、Jリーグは試行錯誤しながら前進を続けてきた。ルヴァンカップを、さらに魅力的にし、もっと有効に活用する手段はあるはずだ。

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