先日、サッカー記者との立ち話でこんな言葉が出た。
「良い試合をしているんだけど勝てないんだよね。内容は決して悪くはないんだけど、それだけに惜しい」
この話題の主は、湘南ベルマーレだ。
今季の湘南は、12年ぶりの古巣への帰還となるFW石原直樹を仙台から獲得したのをはじめ、大宮からMF茨田陽生、鳥栖からMF福田晃斗、札幌から期限付き移籍で東京五輪世代のFW岩崎悠人、外国籍選手ではノルウェー代表FWタリクといった即戦力を補強。とともに、MF斎藤未月、MF松田天馬、MF鈴木冬一ら生え抜き選手が著しく成長しており、補強組と生え抜き選手が融合すれば、とても面白いサッカーになるのでは、と期待を抱かせた。
ところが、である。その期待の一方で、湘南は現在、リーグ5試合で1分4敗と不振にあえいでいる。未勝利なのだから、かなりの不振といえよう。
《ここ5試合の結果》
1節:湘南2-3浦和
2節:湘南0-1仙台
3節:横浜F・マリノス3-2 湘南
4節:湘南0-0札幌
5節:柏3-2湘南
ここまでの結果をご覧になれば分かるように、4敗はいずれも1点差負けだが、5試合が5試合ともそれぞれの色がある。
簡単に振り返ると、2-2に追いついたものの、カウンター一発で黒星がついた浦和戦。
開始早々、風に流されたクロスがそのまま入り、これが決勝点になってしまったアンラッキーな仙台戦。
殴り合いのオープンな試合を進めながらも、個人技でやられた横浜FM戦。
ある程度、試合の主導権を握ったものの、得点がなかった札幌戦。
終盤、2得点を上げたものの、前半の立ち上がりのまずさが響いた柏戦。
決して得点が取れないわけでないが、不安定な試合運びが目立つ。“善戦するもあと一歩”といった感想は否めない。
昨シーズン途中まで曺貴裁前監督が長年育んだ“90分走り、動き、戦い続ける「湘南スタイル」”を現指揮官・浮嶋敏監督が踏襲。これまでの全員攻撃・全員守備のスタイルをベースに、時にじっくり、ゆっくり攻める遅攻のエッセンスを加えている。
その性質上、内容や戦う姿勢がそのまま勝利に比例してしまう。これは湘南の宿命なのかもしれないが、一方で、たとえ内容が悪くてもしぶとく勝つ試合がなければ、勝ち点を積み重ねることは難しい。