■良い試合なのになぜ勝てないのか? またどう改善していくのか?

 浮嶋敏監督は、「大事なのは連続して失点しないこと。悪い流れでさらに失点しないこと」と話す。

 指揮官が言うように、浦和戦では先制したものの、39分にFW興梠慎三、42分にFWレオナルドに決められている。また横浜FM戦では、52分に先制したものの、66分、77分にMF天野純に相次いで得点を許している。

 浦和戦では3分間、横浜FM戦では11分間での2失点は、当然、試合を苦しくしてしまう。

 それらを踏まえ、浮嶋監督は「悪い時間帯から、いかに良い時間帯に戻すか。チームとして礎(いしずえ)にあるものを共有しなければならない。どういうチーム行動をしなければならないのか。要所要所で“してはいけないこと”“しなければならないこと”を考えたプレーを求めたい。全体の戦い方を変えなくてもいいが、戦いの安定性、勝ち点を考えると一番、(その戦い方を)詰めなければならない」と、さらなる意思統一の重要性を語った。

 その中で指揮官の言う「“してはいけないこと”“しなければならないこと”を考えたプレー」とは、いったい何か?

 その具体例を、ベテラン選手であるFW石原直樹が説明した。

「たとえば、ボールをクリアするプレーひとつをとっても、そのボールは“味方につなげるのか”、それとも“大きく蹴るのか”。その選択肢を間違えるとピンチを招き、相手にリズムを与えてしまうことになる。また、ボールをつながなければいけない状況でクリアをしたとき、相手に“余裕がない”というメッセージを与えてしまう」と話し、さらに、「ゲーム運び、試合の流れを読む力がチームにはまだまだなく、ひとりひとり余裕が足りないと思う」と問題点を指摘した。

 確固たるスタイルはある。しかし、それをただなぞっていただけでは、同じように繰り返していただけでは、チームにも選手にも伸びしろはなくなる。そこで重要なのが、そのスタイルを時には調整し、時には柔軟にするための、選手同士のコミュニケーションだ。

 GK富居大樹は「柏戦の前半、なかなかセカンドボールを拾えず、正直、距離感が良くなかったので選手同士、話し合った。僕だけがしゃべっても伝わらないのでポジションの近い選手同士、微調整して(不安定さを)埋めていきたい。もっとコミュニケーションをとったほうが良い。試合のなかで選手が感じたこと、ピッチのなかで起きていることを周りに伝えて修正したい。試合を淡々にやってだけでは難しい」と、コミュニケーションの重要性を語った。

 立て続けに失点しない――たとえば、湘南が繰り返してきたこの負の流れを是正するためには、ゲームの流れを全員が同じように読み、その状況における適切なプレーができることが望ましい。

 第6節の相手は、横浜Mを4-2で撃破して今季初白星を挙げた鹿島だ。18年、19年リーグの対戦成績は2勝2敗と五分。今季、勝ち星のない湘南は、この鹿島に勝って勢いをつけたいところ。
 その鹿島戦にむけ、湘南では選手間ミーティングが開かれた。

「FW、中盤、後ろの選手で“どうやっていこうか”と意見を言う場があった。それが実際の試合で生かされないといけないし、練習から求めていきたい」(石原)

「ポジションごとで話しあいが行われた。たしかに相手のことは大事だが、自分たちが今までやってきたことを再確認したうえで、どう試合に向かうかを考えている。鹿島は強い相手に間違いない。でもやってきたことを思い出して、ピッチに出た11人が責任をもって表現しないことには、どんな相手でも同じ結果になってしまう」(富居)

 コメントからは、危機感がにじみ出ているが、一方で、課題の解決に向けた積極的な姿勢もうかがえる。

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