2002年日韓W杯決勝トーナメント1回戦、韓国がイタリアを破った大田の死闘 (写真:ロイター/アフロ)

 

■森保一監督は〇か×か?

――コメント欄は見るんでしょうか?

杉山  一切見ません。ただ、こう書けば、こういうコメントは来るなっていうのは予想つくんですよ。そうすると、ますますエスカレートするか、それともうまく落ち着けるか。自分のブログページでも、コメント受け付けにしてあるけど一回も開いたことないし。開けない方がいいと言われているけど、そもそも見る気がしないし。やっぱり、見るとそれに影響されちゃうじゃないですか。

 それでも、ふと入ってくることがある。そういうときに思うことは……いや、でも全然、俺自信持ってるからって感じで、影響されないようにしています。コメントを書いた人と言い合いになっても負けるわけないし(笑)。というか、サッカーの見方は個人の趣味の問題なんですよ。だから、こればかりは変えられない。だから、みんな多くの見方があるのが当然なんです。

 でも、最近はそういう、多様性を認めるムードがあると思う。スポーツの中ではサッカー界が一番ありますよね。いつ頃からかは分からないけど、僕が変なことを言っても、あいつはそう思ってるんだろうね、みたいに捉えてくれる人は増えていると思います。だって、スタジアムで僕と戸塚君が隣同士で見ていても、選手に対する評価を採点したときに、僕が5.5で、戸塚君が6.5なんてことは普通にあるじゃないですか。

戸塚  ありますね。

杉山  それがサッカーなんですよ。そこをふまえないと何も始まらないですよ。違いがあることをみんな理解しているから、逆に人の話を聞きたくなる。あの人は、ああいうプレーを評価したんだ、って感じて、そこで自分はどうなんだろうなって振り返る。これがサッカーの面白いところなんですよ

――さまざまなサッカーの見方を知れるということですね。

杉山 そうです。人の意見をそのまま受け取って、単純に反発してしまう。インターネットとかだとそんな反応しやすいじゃないですか。言葉は悪いけど、「バカ」とか書きやすい。そういう人は確かにいると思いますが、サッカー界では今、そうじゃない人の割合の方がどんどん増えてますよね。

戸塚  でも結局、声を上げ目立ってしまうのは、そういう汚い言葉を言った人なんですよね。

――そうした意見が大きく見えてしまうと。

戸塚  そうですね。ただ、サイレントマジョリティーの方がボリュームとしては多いじゃないですか。

杉山  そうそう。そういう言葉を吐いてしまう人は、全体の5%ぐらいしかいないと思う。あと、サッカー界では、新規参入するファンが、そんなに多くないじゃないですか。2002年ぐらいまでは年20%増ぐらいどんどん新しくなっていたと思うけど、今は毎年3%ぐらいしか更新されていないと思う。

――ファンも熟成されてきているということですね。

杉山  慣れてきてる感じですよね。それで、あまり安易に言っちゃいけないんだけど、「ハリルホジッジやめろ」とか、ファンも普通に言うじゃないですか。

戸塚  今の森保監督に対してもひどいですよね。

杉山  そう。だから、これも良いことなのか悪いことなのか分からないけど、韓国なんかに負けたら、急にみんな「やめろ!」とか言うわけ。文句は言ったっていいと思うし、俺も言うけど、文句はキチンと落ち着いて、理路整然と言わなきゃダメと思うんですよ。

 僕は、韓国に負けたってだけでそんな怒るなよ、って思うの。もっと怒るべきところは他に違うところあるじゃん、と。なんか象徴的なものを引っ張り出してきて急に怒ったりするんだけど、それには原因がいろいろあるし。感情的にならずに、よくサッカーを見ようよ、というのがある。

戸塚  エモーショナルな部分は結構ありますよね。

杉山  まあ、それもそれで面白いんですけどね。

――では、森保一監督率いるA代表のサッカーどうように見ておられますか? 

戸塚  現状で森保監督に〇か×かをつけるんだったら、僕は×はつけないんですよ。多分に個人的な感情なんですが、森保監督とは同じ年なんですよ。それでJリーグ開幕前から、森保監督が選手として活動してるところからずっと見てきたので、個人的な思いとして彼には頑張って欲しい。ですが、今の結果を見れば、日本代表もしかりオリンピック代表もしかり、それは評価できないところたくさんありますよね。ただ、彼には頑張って欲しい。という意味で、僕は、〇か×かと言ったら、頑張ってほしいっていう意味で、現状では〇かな。

――そういう意味だと杉山さんは?

戸塚  杉山さんは×では(笑)?

杉山  いや僕は、×というか、僕も頑張ってほしいなっていう気持ちはあるよ。ただ、要するに何を頑張るのかがよく分からなくて。今のままのノリでやってちゃ辛いと思うんですよ。あとは、オリンピックがどうなるか分からないけど、そもそも受ける段階で、2つ受けちゃったところが大失敗なんですよ。まあ、そもそもそれは森保さんの責任でもないんだけど、でも受けちゃったのは森保さんだし。スケジュールとかいろいろ見ても、ちょっと無理なのが最初から分かっているし、中途半端になるのも分かるし。あと、横内昭展コーチ(サッカー日本代表およびU-23サッカー日本代表のコーチ)との分担もよく分からないし。関塚隆さんや新任の技術委員長、反町隆史さんとの関係も。

 やはり、森保さんとの代表監督契約が4年というのは、丸投げしすぎだよね。でも、逆に言ったら受けちゃった方は責任負わなきゃいけないんです。年俸も2億近く、1億数千万円もらってるわけで。それを4年やり通したら、こういう言い方はあれですが、森保一家は三代ぐらいに渡り安泰になるんです。しかもたった4年で。そういうイチかバチかの賭けに出たのは分かるんだけど……森保さん、大丈夫ですか? この仕事は大変な仕事だよ、と思っちゃう。それで、彼からは仕方なく受けちゃったみたいな、匂いが若干感じたりもして……。

戸塚  数字的なことで言うと、2016年のリオ五輪のチームは国内外でのテストマッチってものすごく少なかったんです。ほとんどやっていなかった。15年の3月に一次予選があって、7月に手倉森誠監督の地元の仙台でコスタリカとやって、それ以降はJクラブとの練習試合と、あと12月の直前にUAE遠征に行っただけで、16年1月からの最終予選に挑んだんです。一方で、今回のチームは、もうすでに30試合ぐらいやっているんですよ。森保監督の立ち上げから、ものすごい試合数やっている。多分、五輪世代で、こんなに試合やるところなんて、世界じゃありえないわけじゃないですか。杉山さんよく分かっていると思いますが。

杉山  うんうん。

戸塚  そこまで年度を追ってオリンピックに向けて強化する国なんて、どこにもないじゃないですか。つまり、破格の強化を東京五輪に向けてやってきているのに、海外組を食野亮太郎選手しか呼べなかったからといって、2020年1月のあの惨敗(AFC U-23選手権で日本は1分け2敗でグループステージ敗退)はヒドいと。

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