■リーグ全体を潤す巨額マネー
下図は、プレミアリーグの放映権料の推移である。それまでの国内リーグである「フットボールリーグ」から独立して誕生した1992年以降、更新は7回行われてきた。最初は長期の5年契約が締結されたが、次は1997年から4年間へと短縮され、2001年以降は3年契約が主流となっている。
最初の契約は5年間でおよそ2億3200万ポンド(約324億円。1ポンド=140円として計算、以下同)と言われている。現行契約は2019年からの3年で92億ポンド(約1兆2880億円)と、期間は2年も短いながら、金額は40倍近くにも膨れ上がっている。
この巨額のマネーこそが、プレミアリーグに世界の頂点へのし上がる競争力を与えている。ただし、リーグ内での分配は極めて「フェア」なものだ。
欧州5大リーグは、各国内で大きな格差が生まれている。リーグから各クラブへの分配金の比率は、どこの国を見ても成績によって差がつくようになっている。
首位と最下位が受け取る分配金を見ると、イタリア・セリエAでは2.3倍の差がついている。クラブの経営への監視が厳しいと言われるドイツ・ブンデスリーガでも、フランス・リーグアンと同等の3.3倍という開きがある。レアル・マドリーとバルセロナというメガクラブが際立つスペインのラ・リーガでは、3.6倍にまで広がる。
翻ってプレミアリーグでは、昨季の首位マンチェスター・シティと最下位ウェスト・ブロムウィッチの差の比率は1.6:1にとどまっている。今季から、その差は1.8:1という比率に変更されたが、それでも他リーグのような格差を生むには至っていない。
ただし、我が世の春を謳歌しているかにみえるイングランドにも、危険な問題は存在する。
(後編に続く)