■スカウティングの腕

 そのカラファトが大きく貢献したのが、ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ・ゴエス、ヘイニエル・ジェズスの獲得である。近年、一選手に1億ユーロ(約115億円)以上をつぎ込まず、健全経営で補強を敢行してきたマドリーにとって、重要だったのは若いタレントの発掘だ。才能のある選手を早い段階で見つけ、彼らを確保して、他クラブに先んじる。

 これは、ペレスが第一次政権で採っていた手法に似ている。先行投資と、その後の回収だ。ヴィニシウス(2018年夏加入/移籍金4000万ユーロ)、ロドリゴ(2019年夏加入/移籍金4500万ユーロ)、ヘイニエル(2020年1月加入/移籍金3000万ユーロ)、いずれも1億ユーロには程遠い。彼らが数年以内にマドリーで主力になる、あるいはショーケースとしてその場を活用して他クラブに高値で売却できれば、ペレスとしては御の字である。

 大事なのは、スカウトの「目利き」だ。そこで、カラファトが真価を発揮する。カラファトは15歳~16歳頃から選手たちを追い始める。ヴィニシウス、ロドリゴ、ヘイニエル、いずれもその年代から追跡をスタートさせている。24時間をフットボールに費やすといわれているカラファトだが、その働き方は至ってシンプルだ。試合分析を行い、選手の側近や代理人と関係性を築き、秘密を守る。非合法的な手段は講じない。スペイン生まれ、ブラジル育ちのカラファトにとって、それは天職といえるタスクだったかもしれない。

 ただ、すべての補強を当てられるわけではない。ルーカス・シウバ、パブロ・テイシェイラ、アブネル、ロドリゴ・ロドリゲスなどはマドリーのトップチームで活躍する希望を叶えられず、現在は他チームでプレーしている。それでも、カラファトのスカウティングは十分過ぎる成果を挙げていると言えるだろう。

 かくして、ラ・ファブリカ(レアル・マドリーのカンテラ)の刻印に、新たな色が付けられようとしている。

  1. 1
  2. 2