湘南ベルマーレは、新しい時代を切り拓こうとしている。国外とのつながりの強化もそのための策だが、クラブを根底から支えるのは、やはり育成であると眞壁潔会長は語る。(緊急事態宣言発令前の3月第3週に取材)
育成が結果につながるまで10年は必要
――クラブにとって、育成はやはり重要な柱ですか。
「以前は、スクールをやりながら育成も見るというブラック企業のような環境で、コーチたちがとても頑張ってくれていました。私が社長になった時、育成を本格的に見直しました。
当時、子どもが平塚駅から他のJクラブのバッグを背負って、東海道線に乗って横浜に向かっていきました。(1駅横浜寄りの)茅ヶ崎からは5人、(さらに横浜に近い)藤沢からは15人くらい乗るんですよ。地域に根差すクラブとしてやっていくと言っているのだから、ホームタウンの子どもが他のクラブに行かないように、育成をちゃんとやりたいと話したんです。
スーパーな選手が出てこなくても、普通の子がうまくなる、スーパーではない子がJリーガーになる世界ができないかと聞いたら、当時の強化部長は「時間さえかければできます」と答えました。その時の条件が、指導者の組織改革をするために、曺(貴裁=元アカデミー、のちにトップチーム監督)を呼んでくることでした。
そこが真剣な育成のスタートでしたが、周りから『育成をちゃんとやり出したね』とみてもらえるようになるのは、5年くらい経ってからなんですよね。でも当時、クラブOBのセルジオ越後さんには、ブラジルでは最短でも10年かかる、そのくらいの辛抱が必要だと言われました。私が社長になったのが、2004年。遠藤航(現シュツットガルト=ドイツ2部)たちが中心になってぶっちぎりでJ2優勝を果たしたのは、ちょうどそれから10年後の2014年のことでした」