スタジアムのピッチを思わせる鮮やかな緑のカバー。帯の表には「W杯2回指揮の名将による「サッカーの型」初公開」「コーチ必携のバイブル」という文言が躍り、裏には「プレーモデルが確立されればW杯で優勝を争う日が来ると本気で信じています」という岡田自身の言葉が目を引く。『岡田メソッド 自立する選手、自律する組織をつくる16歳までのサッカー指導体系』は出版以来2回の増刷を経て、2020年3月現在、発行部数1万5000部という数字を積み上げている。
現在、愛媛県今治市で、岡田武史がFC今治というクラブを起点に、同地にサッカーを根づかせ、日本のサッカーを変えよう、という途方もないチャレンジをしていることはご存じだろう。
他にも多くの会社にかかわり、日本サッカー協会のシニア・アドバイザーでもある多忙な岡田が情熱を傾けた本は、どのように作られたのか。
「この本を作る中で岡田さんがとにかくこだわられたのは、16歳までに自立した選手、自律した組織を育てるコーチが増えること。徹底してコーチファースト。そのために必要なことを丁寧に丁寧にほぐして書いた、というがこの本の最たるところです」
と話すのは『岡田メソッド』の発行元である英治出版の山下智也氏。同社の『ティール組織』というマネジメント論の書籍を岡田が激賞したことがきっかけとなり、関係が生まれたという。
「岡田さんと本を作ろう、というお話になったとき、それまで『岡田メソッド』という考え方はほとんど公表されていなかったんです。唯一、『サッカー批評』で岡田メソッドについてお話をされていて。2015年頃だったと思います」(山下氏)
確認すると、2015年5月発行の『サッカー批評74』(双葉社)に岡田のインタビューが掲載され、岡田メソッドについてこう語っていた。
<以下引用>
「じつはまだ半分ぐらいしかできてない。本来はモデルとメソッドを完成させて開幕戦からスタート、となるところだけど、昨年のブラジルW杯後に着想して走り出したから。さらに、頭だけで考えるのではなく、日常の練習を通じたPDCAサイクルも必要になってくる。だから走りながら考えて進めているのが現状。かといって制作中だからと言い訳はできない。結果は出さなければいけないから、監督さんはたいへんですよ。だから、少なくとも6月までには完成させる予定で」
――現時点でどれくらいできあがっているのですか?
「攻撃面で20項目、切り替えで19、そして守備がまだ作成中で…最終的には15~16ぐらいになるかな」
「例えば週に3日、僕が今治に行った時にメソッド会議をする。1日4~5時間ぐらいになるかな。それでも決まらないから、みんなに宿題を出して、グーグルの共有ドライブに提出してもらって煮詰めていくのが流れ。岡田メソッドという名前だけど、とても一人ではできない。契約しているスペイン人から吉武(博文)、大木(武)、眞藤(邦彦)先生、監督、育成スタッフ…いろんな人材の知見を入れて作られているから」
――その中の一つでいいので、教えていただけませんか?
「もったいぶっているわけではなくて、みんなに『企業秘密だぞ』と言っている以上、メディアに出せるものではないな。(笑)。簡単に説明できないし、しっかりと時間をかけて説明しないと誤解されてしまうということもある」
<引用終わり>