■日本サッカーの将来を考えた代表強化

 森保監督は、「たとえ、僕が監督を辞めたとしても、今、選手層を厚くしておくことは必ず次の監督の役に立つ」と言う。

 つまり、日本人指導者である森保一は、今の代表だけでなく、日本サッカーの将来も考えて選手層を厚くする作業を進めているのだ。

 これまでの歴代の代表監督で、自分が辞めた後のことまで考えていた指導者はほとんどいない。強いて挙げれば、フィリップ・トルシエが当時20歳前後だったいわゆる「黄金世代」を鍛え上げてくれたことが、その後の日本代表、いや日本のサッカー界にとっては大きな財産となった例がある(その意味で、歴代監督の中でもトルシエの貢献度は非常に大きかった)。

 だが、その後の監督は自分のチームのことしか考えていなかったようで、ほとんど最強メンバーを固定して使いながら戦ってワールドカップを目指した。イビツァ・オシムがあのまま監督を続いていたとしたら、次世代のことまで考えてくれていたかもしれないが……。

 無理はない。

 外国人監督に与えられた任務は、あくまでも「ワールドカップ本大会出場」なのであって、それ以上でも、それ以下でもない。彼らにとって日本サッカーの将来について考える必要はまったくなかったのだ。むしろ、外国人監督は拙い試合を続けたら途中で解任されてしまうというリスクがあったのだ。日本協会は、任期途中で監督を解任することなどほとんどないが、それでも実際にヴァイッド・ハリルホジッチは解任されてしまったし、トルシエも何度か解任騒動に巻き込まれていた。自己保身のためにも、今のチーム、次の試合が優先されるのは当然のことだ。

 韓国のパウロ・ベント監督は就任以来メンバーを固定して戦っているのも同じような理由なのだろう(孫興民などは、アジア大会にオーバーエイジとして出場した直後にA代表の親善試合にも出場したり、アジアカップにはプレミアリーグの合間を縫って出場するなど、こちらが心配になってしまうほど酷使されている)。

 しかし、歴代の日本代表監督がメンバーを固定して戦ったことによって、最終的に何が起こったのかを思いだしてほしい。

 メンバーが固定されることによってチーム内競争が失われてしまい、チーム力は大会の半年ほど前にピークに達し、ワールドカップ本大会の頃には勢いを失ってしまったのだ。トルシエのチームのピークは2001年秋にイタリアと戦った頃ではなかったか。ザッケローニのチームが最高のパフォーマンスを見せたのは2013年秋にヨーロッパに遠征して、アウェーでベルギーに勝った頃ではなかったか……。つまり、チーム作りを早く進めすぎてしまってもいけないのだ。

 この間、日本人監督が指揮を執ったこともあったが、岡田武史にしても、西野朗にしても、前監督の退任を受けて急遽の監督就任だったので「日本の将来」のことなど考える余裕はなかった。岡田監督は大会直前に新しいコンセプトに切り換えるという賭けによって、そして西野は現有戦力の選手達に自分たちで考える自由を与えることでチームを活性化させて、それぞれワールドカップで結果を出した。

 日本人監督が、4年後を目指して最初から指揮権を与えられ、そして日本サッカーの将来まで考えながら代表強化に当たるというのは、(日本のサッカーのプロ化以降)今回が初めてのことなのだ。

 しかし、森保監督もいつまでも「ラージグループ」の形成ばかりやっているわけにはいかない。目標の大会が近づけば、当然、メンバーをある程度固定してチーム作りに入る必要がある。

 森保監督は、時間的なそのためのメドを半年くらいと考えているのではないか。

 森保監督は当時のU-20監督に就任してから約半年後のAFC U-23選手権(中国)で一応の完成形を作って見せた。A代表監督に就任してから半年後のアジアカップでも決勝進出という結果を出した。そうした過去の大会の手応えがあるはずだ。

 実際、2020年7月に開催されるはずだった東京オリンピックに向けても、本格的にチーム作りを始めるメドは3月からと語っていた。

 東京オリンピックに向けての強化日程は改めて組み直すしかないので、森保監督にとっての次の中間目標はワールドカップ最終予選ということになる。本来なら9月に始まるはずだった最終予選がいつ始まるのかもまだ確定していないが、いずれにせよ今年の後半、遅くとも来年の春ということになるだろう。とすれば、代表の活動が再開された後は、森保監督もいよいよメンバーをある程度固定してチーム作りの作業に入るはずだ。
 代表強化を見る時には、そうした作業のフェーズを考えながら考える必要がある。

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