――それだけ厳格なFIBの基準をJ1だけでなくJ2の全クラブがクリアした
のですね。

村井 そういうことです。J1、J2 40クラブにとっては死活問題ですから、相当な努力をしていると思います。突き詰めると、原点はお客様がスタジアムに足を運んでくれるかどうか。そのためにはお金を払って見るに値するような、本当にスピーディーで、タフで、ゴールを常に狙っているような、そういうワクワクするようなサッカーを繰り広げられるかどうかですよね。そこがベースになるとクラブ側は理解してくれていると思います。

木之本 これは愚問と言われてしまうかもしれませんが、自分も事業が担当だったので、スポンサーからいろんなことを言われてもいいから、ある程度安定した収入が必要だと思うのです。他の国は、例えば中国は国家戦略でやっていこうとしている。ところが国家戦略になりえない日本は、JリーグやJFAはどのようにして資金的な安定を目指すのか。欲を言ったらきりがないですが、そこらへんはどうお考えですか。

村井 今回、明治安田生命様から非常に長期に渡り多額の支援をいただきました。昨年、僕が明治安田生命様にお願いに行く前に、一週間ほどサッカーから離れていたのです。2014年1月31日にチェアマンに就任して、51クラブを回ったり、ワールドカップもあったりして無休でやってきたので、夏休みの休暇をもらいました。少し疲れていたこともあって喧噪から少し離れようと。そこで、根室や網走など、国後島や択捉島が見える所に行きました。根室の外れの床屋に行ったら、そこに明治安田生命の営業所があったのです。僕はJ3ができて以降もクラブ数が多くなり過ぎたとは思っていません。Jリーグを儲かる数だけのクラブ数でやろうとも思っていません。日本に豊かなスポーツ文化を広げようと思ってやっています。そんな時に根室にある営業所を見つけて「こういう会社と組めたらいいな」と思った。

木之本 なるほど。

村井 そこでアプローチをしました。明治安田生命様はもともと2014年はJ3のパートナーでした。僕はJ3を支えてくれるようなパートナーとJリーグをやりたい。これはマーケティング上のビジネスですから、お互いを精査するし、投資の合理性を判断するのでしょうけれど、ベースの理念が一致することは極めて重要です。明治安田生命様にJリーグを支えて下さいと言ったら相当ビックリされていましたが、早速今シーズン開幕節と第2節で1万人近い職員の方々が観戦に訪れてくださいました。全職員でJリーグを応援しようじゃないかと、社内の従業員名簿に「応援するクラブ」という欄まで設けてくださっています。あるクラブの後援会やファンクラブには3500人もの方が入られたと伺いました。Jリーグの理念をとことん語り合って支えてくださって、本当にありがたい話です。イングランドのプレミアリーグにバークレイズ(国際金融グループ)があり、リーガ・エスパニョーラにBBVA(ビルバオ・ビスカヤ銀行)があるように、日本にもタイトルパートナーとしてリーグを支えていただけるところが現れた。今までJリーグを支えてくださっているパートナー各社様とともに一枚岩での態勢が整ったのです。J1リーグ戦の大会方式を変える時は、財政難とか経営的な危機などとずいぶん言われました。今回は私も相当営業しましたし、直接スポンサーも獲得してきました。そうした中で明治安田生命様との出会いもあった。こうした話は裏側の話ですけれど、とてもありがたい話でした。

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