■お腹の出た点取り屋
戦術的な訓練において、ハンガリーが卓越していることには疑問がなかった。「選考委員会」による思いつきで選手を選んでいたイングランド代表に対し、ハンガリーは代表の主力の大半が陸軍チームである「ホンベド」でプレーしていたからだ。この試合でも先発11人のうち7人が「ホンベド」所属だった。
なかでも欧州大陸で名を馳せていたのが、左インサイドフォワード(「2トップ」のひとり)であるフェレンツ・プスカシュだった。1927年4月1日生まれ、この時26歳。年齢に似合わずずんぐりと太り、お腹も出ていたが、その左足のシュートは欧州各国のライバルたちを恐れさせていた。この試合が代表52試合目。そしてこの日2得点を加えることで、ハンガリー代表での得点は61点となった。
ハンガリーという国は、アジア系の民族がつくった国と言われ、そのせいか、西欧的な「名-姓」の順ではなく、正式には「姓-名」の順に名前を表記する。しかしここでは、西欧的な順の名を使うことにする。
ゴールキーパー=(背番号なし)ギュラ・グロシチ(ホンベド)
右バック=②イェノ・ブザンスキー(ドロギ)
センターハーフ=③ギュラ・ローラント(ホンベド)
左バック=④ミハイ・ラントス(ボロス・ロボゴ)
右ハーフ=⑤ヨージェフ・ボジク(ホンベド)
左ハーフ=⑥ヨージェフ・ザカリアス(ボロス・ロボゴ)
右ウイング=⑦ラースロー・ブダイ(ホンベド)
右インサイドフォワード=⑧サンドル・コチシュ(ホンベド)
センターフォワード=⑨ナンドール・ヒデクティ(ボロス・ロボゴ)
左インサイドフォワード=⑩フェレンツ・プスカシュ(ホンベド)
左ウイング=⑪ゾルタン・チボル(ホンベド)
審判はオランダのトリオ。主審レオポルド・ホーン、副審クラース・シッパー、ヨハン・ブロンクハースト。副審2人は今日とあまり変わらない黒い「審判服」姿だったが、ホーンはただひとりグレーのジャケットとグレーの半ズボンというスタイルだった。ユニフォームはホームのイングランドが白シャツに黒パンツ、白い縁取りのある黒ストッキング、そしてハンガリーは伝統のエンジのシャツに白パンツ、赤白の縁取りのある緑ストッキングである。















