大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第192回「テレビとサッカー世界編」(3)「観客が減る」クラブがテレビを敵視した時代、初の生中継が残したトラウマとハイライトの放映時間の画像
今年、日本代表が乗り込んだイングランド。放映権高騰の震源地だが、かつてはテレビ放送を嫌った時代があった。撮影/渡辺航滋(Sony αⅡ使用)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは「現代サッカーの支配者」世界編だ。
 現在ではテレビ中継なくしてサッカービジネスは成立しない。しかし、「生中継されるとスタジアムに人が来ない」と本気で信じられ、サッカー界がテレビ放送を徹底的に忌避し続けた時代があった。

■「観客が減る」と信じられ、サッカー界がテレビを忌避した時代

 わずか15分間の放送だったが、「実験」は大成功だった。「ピッチ上で見られる戦術、ゴールへのシュート、ドリブル、ゴールキーピングなどを、テレビは見事に見せた。フィルムは使われず、アレクサンドラパレスへの受像機に現れた映像は、グラウンドで見られたものとまったく同じだった」と、『ガーディアン』紙は絶賛した。

 翌年4月9日には、ウェンブリー・スタジアムで行われたイングランド×スコットランドの「ホーム・インターナショナル」がフルマッチ中継された。後にイングランドでの数少ない「サッカー生中継」の定番となるFAカップ決勝が初めてテレビ中継されたのも、同じ月のことだった。ただしフルマッチではなかった。

 だが、FAカップ決勝など特別なカードを別にすれば、サッカー界はずっとテレビから距離を置き続けてきた。

「テレビ中継があると、スタジアムにファンが来なくなる」

 誰もがそう信じ込んでいたのだ。イングランドでは第二次世界大戦後の1946年から英国放送協会(BBC)がサッカー協会やフットボールリーグやクラブに中継許可を申し入れていたが、大半のクラブがにべもなく断った。

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