■もはや信仰の対象

 クロアチアのモドリッチはイングランドに2-4で敗れた試合でボランチとしてプレー、深い位置を取ることが多く、たびたび最終ラインに入ってビルドアップの役割を果たしていた。レアル・マドリードでプレーしていたころのように、あるいは2018年ワールドカップ・ロシア大会で祖国を準優勝に導いたときのように、相手ペナルティーエリアに近づいたところで鋭いドリブルを駆使してチャンスをつくるプレーは見られなかったが、前線への配球能力にさすがと思わせるものがあった。

 メッシは別格である。アルジェリアとの初戦ではいきなりハットトリックを演じてチームを3-0の勝利に導くと、私が見たオーストリア戦でも2得点(2-0)。これまでのアルゼンチンの5得点を1人で稼ぎだし、それまでのワールドカップの通算得点記録(ドイツのミロスラフ・クローゼが持っていた16得点)をあっという間に抜き去って18得点となった。ワールドカップ出場28試合、通算出場時間2489分も最多/最長記録という。

 もともとハードワークをするタイプではなく、2014年のブラジル大会では試合の大半の時間をピッチ内で散歩するように動き、アルゼンチンが最後まで得点できないと、いきなりボールを持って前進し、強烈なシュートを叩き込むような印象があった。しかし今大会のメッシは相手へのプレスなど守備面でも「ある程度」の働きをしていた。

 だが何と言っても圧巻なのはその決定力だ。オーストリア戦では左からの突破に合わせて中央に入り、1タッチで先制点。後半アディショナルタイムにはペナルティーエリア内を右から左に移動しながらシュートを放ち、足を止めずにリバウンドを決めるという「荒技」でスタジアムを熱狂させた。

 アルゼンチンは、他のフィールドプレーヤーたちが「働きアリ」のように動き、メッシを支える働きをするのは優勝した2022年カタール大会と同様だが、他の選手のメッシに対する信頼感は、「信仰心」とまで呼べるものに高まっているように見える。パスを受け、キープし、フリーな味方にチャンスをつくるメッシのプレーに衰えはなく、43歳で迎えるはずの2030年大会も十分いけるのではないかとさえ思われた。

つづく

(2)へ続く
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