■自分が置かれた状況を「逆手に取る」視点

 振り返ると、イングランド内で、中村の名前が頻繁に報じられたのは2022-23シーズンのことだ。オーストリア1部のLASKリンツで年間17ゴールを叩き出した当時、ユルゲン・クロップ率いるリバプールが興味を示していると伝えられた。だがその後、こうした報道は沈静化している。

 そうした影響もあってか、今回の強化試合で、英メディアは「日本代表で最もサプライズを与えた選手」として中村の名を上げた。

 そのような声を、中村は冷静に受け止めている。むしろ、自分が置かれている状況を逆手に取るような視点さえ持っている。

 相手からすれば、日本代表には鎌田大地(クリスタルパレス)、伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン)、堂安律(フランクフルト)ら、欧州トップレベルでプレーする選手たちがいる。彼らには入念な対策が練られるだろう。一方、中村に対する警戒は相対的に弱まる可能性があると、中村は話す。

「鎌田選手、伊藤選手や堂安選手などには、対戦相手が、ある程度準備してくると思う。無名とは言わないですけど、僕のような選手には油断してくれると思っているので。そういうところでも、けっこう付け入る隙があるんじゃないかなと。逆に言えば、プラスなのかなと思ってます」

 この言葉には、今の中村らしさがある。自分の現状を過大評価しない。しかし、過小評価もしない。今季の最終戦で4ゴールを叩き出そうとも、フランス2部でプレーしているという外からの見られ方も理解したうえで、それすら武器に変えようとしている。

つづく

中村敬斗(なかむら・けいと)プロフィール  2000年7月28日生まれ、千葉県我孫子市出身。スタッド・ランス(フランス)所属。 三菱養和SCユースから2018年にガンバ大阪へ入団。2019年にオランダのトゥエンテへ期限付き移籍し、欧州でのキャリアをスタートさせる。その後、シント=トロイデン(ベルギー)、LASKリンツ(オーストリア)を経て、2023年にフランス1部のスタッド・ランスへ完全移籍。2024-25シーズンの降格に伴い、現在はリーグ・ドゥでプレー。最終節での4ゴールを含む公式戦14ゴール3アシストを記録し、2年連続の2桁得点を達成した。2023年にA代表デビューを果たすと、高い得点能力と冷静な判断力を武器に、森保ジャパンの左サイドにおける不可欠な存在として活躍している。

 

PHOTO GALLERY ■【画像5枚】「感覚で出した」ラストパス!中村敬斗イングランド戦の雄姿
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