■「普通にやれば上回る相手」ではない日本代表

 日本のプレー内容をきちんと把握し、その上で「勝つためには、我々はトップパフォーマンスを出さなければいけない」と認めていたのだから、日本はすでにイングランドにとって「普通にやれば上回る相手」ではなく、しっかり自分たちの力を出さなければ危うい相手として捉えられていたことになる。事実、ドイツ人指揮官は、日本をかなり具体的に語っていた。

「非常によく鍛錬されたチーム。彼らは5バックでプレーし、2枚の6番(※サッカー用語でボランチや守備的MFを指す)がいて、前線に3人いる。とてもよく動き、流動的にプレーする。大きなサイドチェンジを好み、ボール保持も好む」。トゥヘルのような欧州トップ監督が、フォーメーションや配置の特徴、動き方、前進のルート、プレス回避の難しさまで含め、日本のプレースタイルをかなり精密に捉えていたことが分かる。

 しかもトゥヘルは「日本の3-4-2-1の場合、ゴールキーパーを含めてピッチの深い位置に多くの選手を配置できる。そのため、試合をコントロールしやすくなる。私もこの布陣をクラブで用いたことがあるのでよく分かる。プレスをかけるのはかなり難しい」と言った。つまり日本を、受け身のチームではなく、仕組みで試合を動かせるチームとして警戒していたわけだ。

 評価されていたのは、チームだけではない。選手個々の質にも言及していた。

トゥヘル監督 撮影/原壮史(Sony α1使用)

 とりわけ三笘薫への評価は際立っていた。試合前の会見で彼は「止めるのは難しい選手」と語り、「おそらく一番良い方法は、三笘へのパス供給そのものを止めることだ」と話していた。

 個人で完全に封じるというアイデアではなく、チーム全体で三笘にボールが入る流れ自体を断たなければいけない、と考えていたわけだ。その理由として「彼は前を向くのが好きで、左右どちらにもターンできる。ドリブルに強く、加速力もある。本当に、本当に良い選手。ブライトンでそれを示し続けている」と語っていた。

 こうした警戒心は、試合後に確信へ変わった。トゥヘルは三笘について「彼はトップレベルでプレーできる。それはクラブやプレミアリーグで証明している」と断言した。得点シーンそのものについては自軍守備のまずさを悔やんでいたが、ゴールを決めた三笘の価値を曖昧にすることはなかった。試合前の高評価が、より強い確信として補強された形だ。

つづく

(2)へ続く
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