3月末、森保一監督率いる日本代表が、サッカーの母国が誇る2つの「聖地」に足を踏み入れる。欧州勢とのアウェー戦が極めて困難な現代において、スコットランド(ハムデン・パーク)とイングランド(ウェンブリー・スタジアム)との連戦は、日本サッカー史に残る破格のビッグマッチだ。 実はこの2大スタジアムは、過去の日本代表にも数々のドラマをもたらした因縁の地でもある。ロンドン五輪におけるハムデンでの歓喜。カズとゴンが躍動も、まさかの結末を迎えた旧ウェンブリーでの死闘。そして、男女ともに躍進した新ウェンブリーの熱狂――。 サッカージャーナリスト・大住良之が、歴史的な連戦を目前に控え、スタジアムの知られざるディテールと、日本代表が刻んできた「聖地での記憶」を全5回にわたってマニアックにひも解く。
■シンボルは「アーチ」
スタジアムの取り壊しは2002年に始まり、翌年に完了した。そして新スタジアムが完成するまでにさらに4年間の時間を必要とした。保存運動まで起こった「ツインタワー」だったが再現されることなく、開閉式屋根を持った9万人収容の世界最新のスタジアムが完成したのは、2007年3月のことだった。
「新ウェンブリー」の最大の特徴は、屋根を吊る巨大な「アーチ」である。スタジアムの東西のエンドをつなぐ虹のようにかけられた鉄骨製のアーチは、直径7メートル、高さは134メートル。38メートルの「ツインタワー」といい、このアーチといい、「世界一のタワー」を建てようとしたエドワード・ワトキンの執念がこの土地にまだ漂っているのだろうか。
旧スタジアム時代から、「ウェンブリー」のアクセスの良さは抜群だった。最も推奨されるアクセスは、ロンドン都心から地下鉄メトロポリタン線で「ウェンブリー・パーク」という駅で下車するルートだ。25~30分で到着し、大きな改札口を出ると、階段の下に幅20メートルの歩行者専用道路があり、まっすぐスタジアムまで続いている。周囲の売店をひやかしながらゆっくり歩いても、10分もかからない。そして地下鉄駅の階段で、ウェンブリーのシンボルである「アーチ」も目に飛び込んでくる。


































