3月末、森保一監督率いる日本代表が、サッカーの母国が誇る2つの「聖地」に足を踏み入れる。欧州勢とのアウェー戦が極めて困難な現代において、スコットランド(ハムデン・パーク)とイングランド(ウェンブリー・スタジアム)との連戦は、日本サッカー史に残る破格のビッグマッチだ。 実はこの2大スタジアムは、過去の日本代表にも数々のドラマをもたらした因縁の地でもある。ロンドン五輪におけるハムデンでの歓喜。カズとゴンが躍動も、まさかの結末を迎えた旧ウェンブリーでの死闘。そして、男女ともに躍進した新ウェンブリーの熱狂――。 サッカージャーナリスト・大住良之が、歴史的な連戦を目前に控え、スタジアムの知られざるディテールと、日本代表が刻んできた「聖地での記憶」を全5回にわたってマニアックにひも解く。
■日本代表がウェンブリーで対戦
その後、ウェンブリーはFAカップの決勝戦会場、そしてイングランド代表のホームスタジアムとなった。サッカーで使用するのは、他にリーグカップ決勝など少数の試合に限られ、このスタジアムを「ホーム」として使ったクラブはない。
日本代表は、1995年の親善大会「アンブロカップ」(翌年のUEFA欧州選手権のプレ大会として、イングランド、ブラジル、スウェーデン、日本の4つの代表チームの参加で行われた)の開幕日、6月3日にこのウェンブリーでイングランドと対戦する機会を得た。
加茂周監督率いる日本代表は、3-3-2-2システムで、GK前川和也、DF田坂和昭、柱谷哲二、井原正巳、右ウイングバック名良橋晃、左ウイングバック相馬直樹、ボランチに山口素弘、第2列に森島寛晃と北澤豪、2トップはカズ(三浦知良)と中山雅史だった。
押され気味ながら時折鋭い攻撃を繰り出し、GK前川の好守もあって前半45分間を0-0でしのいだ日本だったが、後半3分、ダレン・アンダートンのシュートが井原の足に当たってコースが変わり、前川が破られる。しかし後半17分、カズの左CKがニアポストに走った井原の頭にピタリと合い、鮮やかな得点で同点に追いつく。























