スポーツと政治は交わるべきではない。だが、戦争の開始など異常事態のぼっ発で、政治がスポーツににじり寄ってくる。世界中で起きている危険な兆候を、サッカージャーナリスト後藤健生が記す。
■イランの選手たちの決意表明
オーストラリアで開催されている女子アジアカップでは、イランの選手団が初戦の韓国戦で試合前の国歌斉唱を拒否。その後、国歌を歌わなかった選手に制裁が課されるとされたため、2戦目以降はほとんどの選手が国歌を歌ったが、最後まで国歌を拒否した選手もいて、選手5人の亡命が認められたという。
2022年のカタール・ワールドカップでも似たようなことが起きた。グループBの初戦でイングランドと対戦したイランの選手たちが、国歌を歌うことを拒否したのだ(僕自身もスタジアムにいて、この異様な光景を目撃した)。
2022年の9月にテヘランでヒジャブ(スカーフ)の着用の仕方をとがめられて風紀警察に拘束されたアフサ・アミニという女子学生が拘留中に死亡。イラン国内ではイスラム法学者ハメネイ師を最高指導者とする厳格なイスラム体制に対する大規模な抗議デモが起こっていた。
そして、イラン代表はそうした抗議活動に同調して国歌の斉唱を拒否したのだ。そして、この事件のせいで集中を欠いたのか、イラン代表はイングランドに2対6で大敗した。
ちなみに、カタール・ワールドカップでもイランとアメリカは対戦し、この時はクリスチャン・プリシッチのゴールでアメリカが1対0で勝利している。当時のアメリカは民主党のジョー・バイデン大統領の時代で、両国は対立はしていてもトランプ政権下のような険悪な状態ではなかった。









