【2025年J2「第34節」ベガルタ仙台vsサガン鳥栖「徹底分析」】仙台、90分+9分…6人目交代FWが奪った劇的すぎる逆転決勝ゴール 背景にあった「ブロックの間」と「強気の姿勢」【戸塚啓のJ2のミカタ】(2)の画像
リードを奪われても強気の姿勢を崩さなかったベガルタ仙台の森山佳郎監督  撮影/中地拓也
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10人でも「外回し」にはならずに

【J2リーグ第34節 10月26日 14時03分キックオフ 仙台 3ー2 鳥栖 ユアテックスタジアム仙台】

 ベガルタ仙台が、驚くべき逆転劇を演じた。

 J2リーグ第34節が10月25、26日に行なわれ、7位のベガルタ仙台は6位のサガン鳥栖とのホームゲームに挑んだ。仙台の勝点は55で、勝点56の鳥栖とはわずかに「1」差だ。また、J1自動昇格圏の2位・水戸ホーリーホックとは、勝点6差である。勝点3を積み上げたい一戦だったが、後半開始直後までに0対2とされてしまう。さらに71分、左SB石尾陸登が退場処分を受けて数的不利に陥った。

 78分にFW宮崎鴻が個の力を発揮し、仙台は1点差に迫る。その直後、森山佳郎監督が動く。10対11になってから最終ラインに下がっていたMF相良竜之介を下げ、特別指定選手のFW中田有祐を投入する。最前線に189センチの高さを加えた。

 同時に、MF荒木駿太に代わって左SB石井隼太を送り出す。石井は最終ライン左サイドに入り、中田は最前線で宮崎と横並びになる。4-4-1から4-3-2へ、システムが変更された。

 システム変更の効果が表われるまえに、仙台は同点に追いつく。またしても宮崎が、「個」の力でゴールをこじ開けた。今度はペナルティエリア右外でパスを受け、鋭いターンから右足を振り抜く。DFに当たったボールはGKの逆を突き、ネットに吸い込まれたのだった。

 この場面を巻き戻すと、途中出場のMF武田英寿が鳥栖の左ボランチの脇でパスを受けている。左ボランチ、左シャドー、左CBの「間」でボールを受けることで、鳥栖は誰かが出ていくか、スライドするか、戻るか、ということになる。それによって守備のバランスが微妙に乱れる。仙台は前半から3-4-2-1の「間」で受けることを意識していたが、10人になってもブロックの外側でボールを回すのではなく「ブロックの間」を意識したことが、同点弾の布石となっていた。

 4-3ー2へのシステム変更も、試合の流れを手繰り寄せる一因となった。数的不利でも前線から規制をかけていくことで、鳥栖のパスワークに乱れを生じさせた。自陣深くまで持ち込まれる場面が減り、敵陣でサッカーをする時間が増えていった。「強気の姿勢」が奏功したのである。

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