■政情が「安定している」理由

 1975年の独立以来、カーボベルデの政情は安定していると言ってよい。1992年につくられた憲法の下、共和制、フランスのような「半大統領制=議員内閣制を伴う大統領制」がとられている。国会議員や大統領の選挙は、自由かつ公正であると、国際的にも評価されている。

 共通語はポルトガル語だが、人々はポルトガル語を元にアフリカの言葉を交えた「カーボベルデ・クレオール語」を常用する。国名はポルトガル語であり、かつては英語(ケープヴェルデ)やフランス語(キャプヴェール)などもよく使われていたが、2013年にカーボベルデ政府の希望で「Cabo Verde」に統一された。日本では「カーボヴェルデ」と表記されていたが、2019年にカタカナでの表記を「カーボベルデ」に統一することを決めた。

 ちなみにFIFAもこの国の政府の要望どおり「Cabo Verde」と表記しているが、アルファベット3つによる「略称」はまだ「英語表記」に基づく「CPV」のままだ。

 政治が安定しているのは、この国に資源らしいものがないためだろう。2023年の国内総生産(GDP)は約3900億円。ワインやコーヒーを産出し、サトウキビやバナナも生産されているが、降雨量が少ないため、外貨を稼げるほどの農業はできない。寒流のカナリア海流が流れる近海は良い漁場で、マグロやカツオ類はこの国の輸出総額の4割を占めているが、国庫を富ませるほどのものではない。農業や漁業などの第1次産業は、GDPの約12%に過ぎないのである。

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