
蹴球放浪家・後藤健生は「食の世界」も放浪する。世界三大料理のひとつ「中華料理」のフィールドを放浪し、その奥深さに気づかされたのは、サッカー欧州選手権が開催されたイングランドでのことだった!
■イングランドでの「悲劇」
1996年にEURO(ヨーロッパ選手権)がイングランドで開催されたとき、僕はマンチェスターの中央駅であるピカデリー駅前の安ホテルにずっと泊まっていました。目の前の駅から列車に乗れば、他都市の会場まで簡単に行くことができました。
そのホテルには、なかなかに美味しいインド料理店が入っていて、ほとんど食事はそこで摂っていました。
しかし、あるとき、たまたま知り合った日本人2人組とチャイナタウンのレストラン(もちろん「中華料理」)に行ったことがあります。席に着いたと思ったら、そのうちの1人がメニューも見ずに「チンジャオロースー」と注文したのです。
もちろん、カタカナで「チンジャオロースー」と発音したって中国語として通じるはずはありません。彼はおもむろにメモ用紙とボールペンを取り出して、墨痕(ぼっこん)鮮やかに「青椒肉絲」としたためたのです。
これで、通じないわけはないというわけです。
しかし、彼の試みは徒労に終わりました。その店に「青椒肉絲」はなかったのです。