
英国で「サッカーを国民の手に取り戻す」ことを目的とした法案が可決された。莫大な収益をもたらすプレミアリーグ他、ビッグビジネスとして扱われることが多いサッカーに、「健全性」を与えようというものだ。サッカージャーナリスト大住良之は、この動きを「革命」と考える。
■欧州の「主要リーグの合計額」以上
北海に面するグリムズビーという町は、かつて英国一の漁業の町だったが、現在はその漁業も衰退し、人口も10万人を割る静かな町となっている。ここをホームタウンとする「グリムズビー・タウンFC」は、かつては1部リーグでプレーしたこともあったが、現在は「EFLリーグ2」。すなわち「4部」に所属している。このクラブの共同オーナーで元会長のジェイソン・ストックウッドが中心となり、いくつものクラブが集まって「フェア・ゲーム」という組織をつくり、この法案の支持を表明してきた。
ストックウッドは「重要なのは利益の再分配である」と強調する。
「プレミアリーグの放映権収入は、現在、欧州の主要リーグの合計額を上回るほどに成功を収めている。しかし、その成功の背景には、1888年に誕生して以来、イングランドのサッカーを育ててきた『リーグピラミッド』に関与した、すべてのクラブの過去・現在の貢献があることを忘れてはならない。イングランドのサッカー文化、その強さを支える『エコシステム』の繊細なバランスの上に成り立っている」