■自陣からのビルドアップで仙台が決定機を生み出す

 仙台からすれば、自陣からのビルドアップがピンチを招いた場面である。リスクヘッジに敏感になってもおかしくないが、その後もゴールキックを蹴らずに自陣からの前進にトライしていく。

 14分だった。ゴールキックからDFラインでボールを動かすと、右CB井上詩音がひとり剥がして持ち出し、センターサークル付近へ下がっていたFW荒木駿太へ斜めのタテパスを通す。

 ここからの展開が見事だった。荒木がワンタッチではたくと、そのパスを受けたボランチ鎌田大夢もワンタッチで左前のMFオナイウ情滋へつなぐ。オナイウもワンタッチで左SB奥山政幸へ落とす。千葉の守備陣の対応より明らか早く、ボールが動いていった。

 ペナルティエリア左角付近でオナイウが奥山からリターンパスを受け、右ポスト際へクロスを供給する。ここへFWエロンが走り込んでいたのだが、至近距離からのヘディングシュートは千葉GKホセ・スアレスにブロックされたのだった。

 この日の仙台は、FWエロンが7節以来9試合ぶりに先発出場していた。176センチながら重量感のあるこのブラジル人FWは、ラフなボールでも相手DFと競り合いながら収めることができる。

 千葉が前線から規制をかけてきたらエロンへ縦パスを入れる選択肢もあるなかで、仙台は自陣から前進する方法を選び、決定機まで持っていった。惜しくも得点には結びつかなかったものの、こうしたプレーの再現性を高めていけば、ゴールへつなげることができる。課題となっている得点力も、上向いていくはずだ。

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(2)へ続く
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