■かなり危険な「半密室空間」
さて、本題です。
コンパートメントというのは、一種の密室です。
古い時代にはコンパートメントは完全に独立していて(乗合馬車と同じく)駅のプラットフォームから直接乗降したそうで、その時代は本当に密室でした。隣のコンパートメントに行くには一度列車を降りなければなりませんから、列車が走り出したら移動は不可能です。
今は、各車両の前後にある乗降口から乗り込んで、通路を通って目的のコンパートメントに向かうようにできています。一つひとつ覗いて、「ここ空いてますか?」と確認しながら席を探すわけです。ですから、隣のコンパートメントに行くこともできますし、廊下に出て窓の外を見ていることも可能です。
しかし、指定席だったり、満員の場合は、一つのコンパートメントに座ったら、到着までそこに座っていなければなりません。通路との扉を閉めてしまえば、半密室空間になります。
考えてみれば、かなり危険なことです。半密室の中で、どこの誰だかわからない人物と数時間一緒に過ごすわけですから……。
相手が犯罪者だったら、人種差別主義者だったら、どうすればいいんだ? そうでなくても、見ず知らずの他人と顔を合わせているのはきまり悪いではありませんか……。肌も露わな服装の妙齢の美女が目の前にいたら、居眠りもできなくなってしまいます。