
その瞬間、目をサポーターへとまっすぐ向けながら立ち尽くしていた。手を腰に当てるか、あるいは、後ろに回すかのみ動き、それ以外の動作は一切ない。呆然としている素振りは一切なく力強そうにも見えるが、それでいて、どこかもろさも感じさせる。
川崎フロンターレの大関友翔は何を考えていたのか――ACLE決勝アル・アハリ戦後のサポーター挨拶時の気持ちを聞いたのは、少し時間が経った5月15日のことだった。
「正直、あんまり何も考えてなかったんです。受け入れられてなくて、自分の中で整理はできてなかったですし、頭は真っ白で、ただ、サポーターの方の応援してくれている姿を、感謝の気持ちと申し訳ない気持ちがあった中で、この光景をとりあえず目に焼きつけとこうと思って。アル・アハリもサポーターもですし、その他のサポーターも、スタジアム全部の風景を目に焼き付けようと思って」
ACLE3試合に出場した大関は、当時を振り返りながら、こう答えてくれた。
――悔しいというよりは受け入れられなかった?
そう尋ねれば、「そのときはそうですね」と首肯したうえで、「ロッカーに戻った時や試合を振り返ってから“悔しい”という思いと、“自分がもっとできた”ということは思いましたけど、そのときはあんまり受け入れられないというか、頭真っ白な感じでした」と話す。