■「点を取ることが一番のアピールだ」

 厳しい台所事情の中でも、これまで出番の少なかった面々が奮闘しているのは前向きな要素と言っていい。岡山戦途中から右SBに入っている津久井佳祐、樋口不在のボランチの一角を占めている舩橋佑などは1年前のランコ・ポポヴィッチ監督体制では戦力外に近い扱いを受けていた。そういった若手がピッチに立って日に日に自信をつけているのは、鹿島というクラブにとって大きい。
 さらに言うと、横浜FC戦ではU-17日本代表のエースである16歳のFW吉田湊海がクラブ史上最年少出場を果たした。
「ヤナさん(柳沢敦コーチ)から『今、トップチームのFWのケガ人が多くて、チャンスがある』と言われていて、『自分自身が点を取ることが一番のアピールだ』とも声をかけられた。それで昨日(4月28日)の紅白戦で点を取れたのでよかった。次は最年少得点を狙っていきたいと思います」と坊主頭の若武者は元日本代表FWの指導者に背中を押されたという。そうやって鹿島のDNAを若い世代に引き継いで、クラブを担う戦力になってくれれば理想的。それは同じアカデミー出身の鈴木優磨も語っていたことだ。
「アントラーズはユースからいい選手が育っている。(徳田)誉だったり、湊海だったり、非常にいい選手が出てくるんで、いつか彼らに引導を渡せる日が来ると思ってますけど、まだまだ負けるわけにはいかないですね」と背番号40は刺激を受けていた様子。下からの突き上げがあってこそ、年長者たちも危機感を持って取り組めるようになる。これまでの鹿島はそういう部分が足りなかったが、鬼木体制移行後は若い世代の台頭、選手層の拡大が進んでいる印象もある。主力級の負傷者続出が結果的にプラス効果をもたらしているとも言っていいかもしれない。

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