■何が「足りなかった」のか?
さて、戦い方として、何が足りなかったのか?
ひとつは、攻撃の迫力だ。日本の選手たちは正確にボールをつないで攻撃の形を作ることができた。だが、正確につなぐことを優先しすぎて、無理をしようとしなかった。
さすがに、準々決勝で相手にリードされて迎えたサウジアラビア戦の後半は、なんとか1点を奪おうと迫力のある攻撃を仕掛けたが、それ以外の試合では仕掛けがあまりにも消極的すぎた。
縦にボールを入れればチャンスになる可能性がある場面でも、ちょっと相手に寄せられると安全にボールを横に、あるいは後ろに動かしてしまう。
もちろん、相手にカットされる危険があるときにプレーをキャンセルする冷静な判断力も必要だが、無理をすべきときは無理をしなければいけない。「冷静さ」が、時として「臆病さ」になってしまうのだ。
早々に1点を取ってリードすると(今大会ではそういう展開が多かった)、とたんに無理をしなくなってしまう。だが、サッカーでは「1点のリード」というのは、けっして安全圏ではない。なぜなら、サッカーと言うのは得点が入りにくい競技ではあるが、同時に偶然の失点が生まれやすい競技でもあるからだ。危険なエリアでのミスや不運でボールを運ばれたり、シュートがDFに当たってコースが変わって決まってしまうこともある。
日本と対戦するときには、アジアの相手国は一発のロングボールやスピードを生かしたカウンターを狙ってくるのだ。
だから、1点を先制したら、できるだけ早く2点目がほしいのだ。
だから、リードしている局面でも「安全第一」ではなく、アグレッシブに2点目を取りにいく姿勢がほしいのだ。日本人選手のクオリティーを考えれば、取りに行けば必ず2点目が取れるはずだ。
勇気を持って、無理をしてでも2点目を奪いに行く……。指導陣には選手たちにそういうメンタリティーを植え付けてほしいものだ。