■前半だけで7kmの走行距離をもたらした構造
それは数字にも表れている。この試合で松本泰志は前半のみで交代となったが、その走行距離は7.12km。45分間の出場とは思えぬ数字で、安居海渡は90分で12.3kmを走っており、これは浦和レッズにおいては最長のものとなる。
ちなみに、柏の最長走行距離を記録したのは小泉佳穂で13.14km。それに続くのは右ウイングバックに入った久保藤次郎の13.1kmで、さらに、熊坂光希の12.1kmとなる。柏の方が走行距離は多いものの、攻撃のためなど自らの意思で走る部分が多く、浦和は走らされた距離だったことには留意が必要で、安居は残り10分ほどの時点で足をつってピッチに座り込んでしまった。
「サヴィオが前に行く分、その裏が空くことを柏の選手は分かっていて、そこに小泉佳穂がうまく流れて使っていました。その際、安居もついていくのですが、起点になる小泉もシンプルに逆サイドに振ったり戻したりするので、さらに浦和の走る距離は長くなる。柏は相手をよく走らせるし、相手のことをよく観てプレーしているなと思いました」
柏はさらに巧みに、浦和レッズを苦しめていく――。
(語り:二階堂悠)
(「その2」へ続く)
【にかいどう・ゆう】
1984年5月17日生まれ。宮城県出身。筑波大学大学院卒業後にメキシコ留学を経て、杭州緑城(中国)のコーチに就任。2014年からモンテディオ山形のコーチ、2017年から川崎フロンターレのコーチを務めた。川崎ではクラブの国内7冠達成に寄与し、24年シーズンを持って同職を退任した。