■背番号28が「強烈シュート」で名門復活
1985年の欧州チャンピオンズリーグ決勝戦、ベルギーのブリュッセルで行われたリバプール対ユベントス(イタリア)で、リバプールのサポーターがユベントスのファンに襲い掛かり、39人もの犠牲者を出すという事件があった後、イングランドのクラブは欧州のクラブカップ戦から閉め出されており、「フーリガン対策」は当時の英国社会の大きな課題となっていた。
しかし、「ヒルズブラの悲劇」は、フーリガンによるものではなく、スタジアムの設備や入場システムに起因するものであることがわかり、以後、イングランドのサッカースタジアムでは立ち見席が完全に撤廃されることにつながる。
1992年4月、全個席で4万人収容に改装されたヒルズブラは、3年ぶりにFAカップ準決勝を迎える。ノーリッジ・シティ対サンダーランド。2部のサンダーランドが1-0で勝って決勝に進んだ。入場券はすべて売り切れ、スタジアムは4万102人の観客で埋まったが、混乱はまったくなかった。この後、1997年のFAカップ準決勝ミドルズブラ対チェスターフィールド戦の再試合が開催されたが、これがヒルズブラでのFAカップ準決勝の最後となった。
「ヒルズブラ」には、そうした栄光と悲劇の歴史が詰まっている。
シェフィールド・ウェンズデイは2000年にプレミアリーグから降格し、「3部」との間を行き来していたが、2023年に「2部」に復帰し、2023/24シーズンは24チーム中20位と低迷したものの、今季は全46節のうち31節を消化した時点で11位。今季のプレミアリーグ昇格は難しいが、35歳のダニー・レール監督(ドイツ)の下、キャプテンのMFバリー・バナン(スコットランド代表)、得点源のMFジョシュ・ウィンダスを中心に、「名門復活」を期している。
背番号28を与えられた初瀬亮は、このクラブ初めての日本人選手である。そのダイナミックなプレーと強烈なシュートで、サッカーの歴史ある町の名門クラブ「ビッグなウェンズデイ」をプレミアリーグ昇格に導き、「栄光の時代」を再現させることを期待したい。