■ドーバー海峡を渡って

 もう一つの思い出は、1974年の西ドイツ・ワールドカップの後、オーストリアやスイス、オランダ、ベルギー、フランスを経てイギリスに渡ったときのことです(旅程にオランダを追加したのは、ヨハン・クライフを見たからでした)。

 パリで観光を済ませてから、フランス北部、ベルギー国境にも近いカレーまで列車で移動して、そこから船でイングランドの港町ドーバーに向かいました。

 そう、英仏海峡のうち、最も距離が近いこの部分は「ドーバー海峡」と呼ばれています(フランスでは「カレー海峡」と呼ぶこともあります。最近、アメリカで「メキシコ湾」のことを「アメリカ湾と呼べ」と言い出した大統領がいましたが……)。約40キロの船旅です。1994年に開通した英仏海峡トンネルも、このドーバー海峡の下を通っています。

「ドーバーの白い崖」も有名です。ドーバー近くではグレートブリテン島の南岸が高さ100メートル以上の真っ白い崖になっているのです。「チョーク」と呼ばれる石灰岩の一種で出来ているからです。

 日本語では「白亜」と言います。そして、このチョークを切り出したものが黒板に文字を書く「チョーク」となりました(もちろん、今は炭酸カルシウムや石膏を固めた工業製品ですが)。

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