■ブラジル代表「レジェンド」が国立で火花
第1回決勝戦の主審は十河(そがわ)正博、当時43歳。栃木県出身の高校教師で、1983年からJSL1部を担当、1986年からは国際審判員としても活躍してきたベテランだった。副審の塩谷園文一(44歳、東京都出身)と山田等(43歳、秋田県出身)は、ともに元日本サッカーリーグ(JSL)の選手で、塩谷園はGKとして古河電工で活躍、そして山田はFWあるいはサイドバックとして、スピードを生かして日本鋼管(NKK)でJSL170試合に出場した。
3人のベテラン審判員は、ズラリと並んだヴェルディのスターたちにも、そして、この年に「寄せ集め」で結成されたばかりながらMF三浦泰年(前所属は読売クラブ)、MF澤登正朗(この年、東海大を卒業し、JSLを経ずに清水でプロとなる)、堀池巧(読売クラブ)、長谷川健太(日産)ら日本代表選手を並べたエスパルスにも位負けすることなく、堂々たるレフェリングを見せた。
ヴェルディの監督はブラジル人のペペ(本名はジョゼ・マシア)。やや太っちょでハゲ頭の小柄な人だったが、ブラジルでは「レジェンド」の一人に数えられる大スターだった。1950年代から1960年代にかけてサントスFCで左ウイングとして活躍し、ペレとともにサントスとブラジル代表の攻撃を牽引した。左足のアウトサイドで蹴る強烈なFKの名手としても知られていた。この年57歳。穏やかで公平な性格で、選手たちにも慕われたが、残念ながらこの年を最後にブラジルに戻った。
一方のエスパルス監督はエメルソン・レオン、47歳。ブラジル代表歴代GKの5指に入る人で、4回ものワールドカップに出場した。こちらもブラジルの「レジェンド」のひとりであり、後にはブラジル代表監督も務めた。歯に衣(きぬ)着せぬ言動で日本でも話題を提供し続けたが、このナビスコカップ決勝を前に「なぜ会場が国立競技場なんだ」とJリーグにかみついた。「国立はヴェルディのホームであり、不公平だ」というのだ。