大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第150回「知られざるルヴァンカップの真実」(1)名古屋と新潟の決勝で「思い出した」名将の言葉、そのものにも「価値がある」銀含有率92.5%優勝杯の製造元の画像
今年のルヴァンカップ決勝は、大会史に残る名勝負となった。撮影/原壮史(Sony α1使用)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、名古屋グランパスとアルビレックス新潟の手に汗握る決勝が話題となったルヴァンカップの「意外と知らない」本当の話。

■今年「亡くなった」ワールドカップ優勝監督

「フットボールという『もの』は存在しない」

 そう語ったのは、今年5月に85歳で亡くなったアルゼンチンの名将セサル・ルイス・メノッティである(『サッカー・マガジン』1979年11月10日号)。

 地元開催の1978年ワールドカップでアルゼンチンを初優勝に導いたメノッティは、翌1979年、アルゼンチンのU-20代表を率いて日本で開催された「ワールドユース大会(現在のFIFA U-20ワールドカップ)」にやってきた。その折に牛木素吉郎さんのインタビューに応えたのである。

「1980年代の世界のサッカーはどのようになっていくのか」

 インタビューはチームの宿舎で、昼食後お茶を飲みながら30分間という約束だった。約束の時間が過ぎようとした頃、牛木さんはそんな質問をした。このインタビューの「核」ともいうべき問いだった。だが、メノッティは「私たちも知りたい」と、とぼけた。

 しかし、メノッティの話したいことを引き出す牛木さんの絶妙な質問と、彼の言葉に対する牛木さんの反応に満足して興に乗り、結果的にインタビューは2時間を超した。その終盤に、1時間以上も前の質問を引き合いに出して、メノッティはこの重要な言葉を語り、詳しく説明したのである。

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