■求められた「なでしこらしい」プレー

 2点目は、相手のDFがボールを持ったところにプレッシャーをかけてボールを奪って、こぼれ球を田中美南が中央に入れ、藤野あおばが押し込んだゴールだった。

「ハイプレッシャーで素早くボールを回収して攻める」という佐々木則夫監督代行の方針を体現したゴールだった。

 前半を3対0で折り返した日本は、後半も56分に右サイドの守屋都弥からのクロスを、後半から投入されたばかりの谷川萌々子が決めて韓国を突き放した。

「快勝」なのは間違いない。

 だが、その後も試合をコントロールしながらも追加点は奪えず、選手交代を繰り出すことでチームとしての連係も次第に薄れてきてしまった。

 前任の池田太監督は、4バックと3バックを使い分け、格下相手にも慎重な戦いで確実に勝点3を奪い、格上相手には時には割り切ってリトリート(相手にボールを奪われた場合、すぐに自陣に戻って、守備ブロックを形成して守る)してカウンターを狙うなどゲーム戦術を駆使して戦って、2023年の女子ワールドカップ、2024年のパリ・オリンピックで、ともにベスト8進出に成功した。

 だが、元日本代表監督で、現在は女子委員長を務める佐々木氏はこの戦い方に不満を持っていたのだという。高い位置からプレッシャーをかけて、素早くボールを奪い返してショートカウンターで点を取りにいったり、また、試合をコントロールしてボールを握ってビルドアップする、より積極的な「なでしこらしい」プレーを望んだというのだ。

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