■前田直輝の選択肢を「閉ざした」もの
続いては、71分31秒の浦和の攻撃の場面。
原口からFWの前田直輝へのロングパス。今の浦和にはこうした展開でしか点数を入れられない状態である。だが、前田は力ないシュートで終わっている。このシーンも浦和の窮地を表している。
前田ならば、もっと落ち着いてボールをキープして得点の状況を作り出せるはずなのだが、とにかく点数を取らないとならないというメンタル面が作用して、焦った形でシュートを打ってしまっている。
81分10秒の浦和MF渡邊凌磨のシュートのシーンも、同様のことが言える。ボールをもらった渡邊の左横のバイタルエリアには、中島翔哉がフリーで立っていた。時間的に得点が欲しいと考えてシュートを選択したのだが、渡辺の視野力からしたら、フリーの中島が目に入っていたはずだ。でも、「なんとかしなければ」「決めなければ」という焦りが選択肢を閉ざさせてしまったのだろう。
負のスパイラルに墜ちていっている浦和。攻撃に関して、一人ひとりの走る距離が短くなっている。したがって、ボールホルダーを追い越していく選手も少ない。
人数をかけないでもチャンスを作る。これがスコルジャ監督のやり方なのかは、今の時点でははっきりしない。ただ言えることは、圧倒的な攻撃力で相手を捩じ伏せるようなサッカーではなく、1-0のような最小得点でも勝利を目指すサッカーを志向しているようには映る。