大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第147回【悲願のワールドカップ初出場へ、石の街で「日本人墓地」を守り続ける人々】(1)小久保玲央ブライアンがゴールを守る日本を圧倒 の画像
タシケントの都心の公園に立つ「ナヴォイ劇場」。今も連日、オペラやコンサートが開催されている。(c)Y.Osumi

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、U-23アジアカップで日本と優勝を争った、成長著しいサッカー新興国と日本の知られざる「因縁」――。

■2連勝で勝ち点6「10月に決めるか?」

 2024年10月は、ウズベキスタンのサッカー史で最も重要な月になるかもしれない。ワールドカップのアジア3次予選A組。2連勝でスタートして勝ち点6でイランと並ぶウズベキスタンが、ホーム2連戦でイラン、そして初戦でカタールに完勝したUAEと対戦する。
 ウズベキスタンのサッカーが急速に伸びていることは、今年5月にカタールで行われたAFC U-23アジアカップを見れば明らかだろう。日本との決勝戦を前に主力3人が離脱しながらも優勢に試合を進め、シュート数では18対8と日本を圧倒した。日本は山田楓喜(東京ヴェルディ)が見事なシュートを決めたが、GK小久保玲央ブライアンのPKストップがなければどういう結果になったかわからない。
 初出場となったパリ・オリンピックでは1分け2敗でグループ最下位に終わったものの、2010年代の後半から、ウズベキスタンはU-20やU-23のレベルではアジアでもトップクラスの実力を見せ始めていた。それがいよいよフル代表の年代に上がり、悲願のワールドカップ初出場へと突き進んでいるのが現在のウズベキスタン代表なのだ。

 10月の2試合の会場はいずれも首都タシケントのミリー・スタジアム。ウズベク語で「ナショナル・スタジアム」を意味し、スタジアムの正面には英語で「NATIONAL STADIUM」という大きな英語の看板が出されている。2012年に完成したサッカー専用スタジアムで、当初は「ブニョドコル・スタジアム」と呼ばれていたが、2018年に改称された。収容3万4000人。10月の2試合、とくに、ともに2連勝で迎える10月10日のイラン戦は、熱狂的なファンで埋まるに違いない。
 さて、ミリー・スタジアムが位置するのは、タシケントの都心から南へ6キロほどの地区。そこから車でわずか数分のところに、私たち日本人に深い意味のある場所がある。「抑留日本人墓地」である。

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