サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、小さな国の大きな勝利。
■最古の共和国「サンマリノ」の起源
サンマリノは、イタリア半島の東海岸、アドリア海に面したリミニから南西に15キロほど入ったところにある内陸国である。アペニン山脈の山麓に位置する。なぜこんなところに「小さな世界最古の共和国」ができたのだろうか。
伝説では、現在のクロアチアにあるアルバ島(現在のラブ島)からアドリア海の対岸にあるイタリア半島のリミニに出稼ぎにきた「マリヌス」という石工が建国の主だと言われる。彼は敬虔なキリスト教徒だったが、当時のローマ帝国ではキリスト教徒は迫害されており、リミニの信者たちは重労働に苦しんでいた。マリヌスはこうした人々を助け、慰めて、尊敬を集めた。
ローマ帝国がキリスト教を公認したのが313年。晩年のマリヌスはリミニの南西にある「ティターノ」という山にこもり、山頂に修道院を築いて神と向き合う生活に入った。その後、彼は「聖人」に列せられ、イタリア語風に「サンマリノ」と呼ばれるようになった。
「マリヌス」はギリシャ語で「海の」という意味であり、イタリア語では「マリノ」となる。山だらけで海などない国が「サンマリノ」となったのは、そうした歴史によるものだった。やがてティターノ山の所有者は、修道院を中心とする約60平方キロの土地を修道院に寄進、その地域が現在のサンマリノ共和国となったのである。