大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第145回【サッカー界から消えた「フェアプレー」は何色か】(2)大悪人が考案した「マーク」とFIFA運営の「レッド」、定着した「色のイメージ」の画像
イエローカードをもらうレアル・マドリード所属のヴィニシウス・ジュニオール。フェアプレーの「色イメージ」は、このカードがモチーフになっているというが…。撮影/原悦生(Sony α‐1)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回のテーマは、黄色か、青か―。

■行事や大会で「フェアプレー」をアピール

 いまでは「スポーツ界の大悪人」の上位にランクされるほどの大物になったゼップ・ブラッターだが、1936年生まれのスイス人であり、ローザンヌ大学で経営学と経済学の学位を得たビジネスマンだった。スポーツ関連の広報や大会運営に力を発揮、1972年(ミュンヘン)オリンピックで実績を残したことで、1975年にFIFAにヘッドハンティングされた。39歳のときだった。

 最初は「テクニカルディレクター」として、FIFAがコカコーラのスポンサードを得て新しくつくる20歳以下の世界大会(ワールドユース)の事務方筆頭をつとめ、やがてジョアン・アベランジェ会長(ブラジル)の厚い信頼を受け、わずか5年後の1981年には「事務総長」に就任した。アベランジェ会長は通常はブラジルのリオデジャネイロで生活していたため、チューリヒのFIFA本部はブラッターが取り仕切るようになる。

 以後、FIFAの行事や大会では、常にフェアプレーがアピールされるようになる。キャンペーンのマークがつくられ、旗がつくられ、FIFA主催の試合では、この旗を先頭に両チームが入場する形が導入された。そして両チームの選手たちがレフェリーと相手の全選手と握手する試合前のセレモニーも定着した。

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