後藤健生の「蹴球放浪記」第227回「スラム街でサイン攻めにあう日本人」の巻(2) ラウドルップ躍動でウルグアイ一蹴、6年後の欧州王者の「強力カウンター」の画像
メキシコの子どもたちは写真好き? カメラを向けると大勢集まってくる。提供/後藤健生

 世界中、至るところにスタジアムがある。蹴球放浪家・後藤健生が渡り歩いた先には、スラム(都市部で極貧層が居住する過密化した地区)の中のスタジアムもある。2026年のワールドカップが行われるメキシコにも、そんなスタジアムがあった――。

■中南米で有名な「危ない」スタジアム

 実際、行ってみるとネサワルコヨトルは低層の粗末な住宅が延々と立ち並んでいる庶民的な、あるいはスラムのような街でした。選手団やサポーター、メディアを乗せたバスが、そんな街の中をスタジアムに向けて走っていきます。

 危険はなかったのでしょうか……。

 ラテン・アメリカのスラムといえば、ブラジルのファヴェーラやアルゼンチンのビシャが有名ですが、そんな所でワールドカップを開催するのは無理でしょう。

 ブエノスアイレスの名門、サンロレンソ・アルマグロのスタジアムは、ブエノスアイレス市最大のビシャの真ん中にあるので「サンロレンソのスタジアムまで」というと、タクシーに乗車拒否をされてしまいます(「蹴球放浪記」第9回「乗車拒否の理由」の巻)。

 エクアドル最大のスタジアム、「エスタディオ・モヌメンタル」の目の前にも、広大なスラム街が広がっています。1995年にU-17世界選手権(現、U-17ワールドカップ)を観戦に行ったときには、かなり危険な臭いがしたのを覚えています。

 しかし、ネサワルコヨトルという街では危険はまったく感じませんでした。少なくとも、ワールドカップ開催期間中は……。

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