■「力まず、練習通り」の監督の言葉

「力まず、練習通り」という古川は横内監督からも、迷ったら振り抜けと言われている。またエコパスタジアムは静岡学園で多くのゴールを決めてきた舞台でもあり、高校サッカー選手権の静岡県大会で、このシーンと全く同じシチュエーションで、ゴールを決めた記憶が蘇ってきたという。「まじ一緒の形で。すげえなって(笑)」と感慨深げに語る古川だが、攻撃面の活躍の陰で、守備の貢献も見逃せないものがあった。

 古川と対面していたのは右サイドバックながら7得点を記録している濃野だった。前半からPK獲得のシーンでも倒された師岡柊生のすぐ後ろに走り込むなど、何度も危険な攻め上がりを見せていた。「サイドバックであれだけ得点力のある選手はすごい魅力的ですし、いい選手だなというのは多分、誰が見ても分かるので。そこのマークの徹底はチームとして決まっていた」という通り、古川は守備のタスクを意識しながら、逆に濃野が攻め上がった背後のスペースをいかに突くか。「そういうやり合いが面白いポイントだった」と笑顔を見せた。

 熱量の高い試合だったが、これまでの4ー2ー3ー1から4ー3ー3に変更して臨む中で、磐田の選手たちは守備のタスクを全うしながら、攻撃で個の特長を組み合わせることで、優勝争いに加わっている鹿島を上回った。その戦いぶりを象徴する古川のパフォーマンスだった。

(取材・文/河治良幸)

(後編へ続く)

(2)へ続く
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