まさに、日本人らしさが詰まった誇らしき姿だった。灰色の雲が頭上を覆ったリヨンスタジアム。そんな重苦しさも吹き飛ばすような光景が、そこにはあった。
大岩ジャパンがフランスでの冒険を終えたのは、現地時間8月2日の18時58分のことだった。試合終了を告げるホイッスルは、日本人選手とサポーターにとってはとても甲高く、そして、残酷な音色に聞こえた。3-0。スコア通りの完敗で、4年に1度の舞台を去ることとなった。
選手は涙を流し、あるいはうなだれた。それに前向きな声をかけたのは極東から駆け付けたサポーターだ。次のステージでの活躍を求める声が、選手に降り注いだ。
選手がピッチを去ったあと、観客席からある声が響いた。
「さあみんな、ゴミを拾うよ!」
その声は明るく、そして、周囲の人を動かす力を持っていた。その一声で、ゴミ拾いが始まったのだ。通路のゴミを拾い、椅子の下をのぞきこんでと、元の姿にしようとする気持ちが見られたものだった。